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鉄鋼業界の動向と展望

(2023/10/27更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■製鉄・製鋼業の業績動向
■鉄鋼卸売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図


■業界の概要

国内生産量は漸減傾向

鉄鋼業界は、鉄鉱石から鉄を生産する「高炉業」、電気炉で鉄スクラップを溶解して再び鋼材を生産する「電炉業」、鉄にニッケルなど様々な元素を加えた合金鉄を生産する「特殊鋼・ステンレス鋼製造業」、鋼材を様々な製品に加工する「鋼材加工業」それらの流通を担う「鉄鋼卸売業」などで構成される。

あらゆる用途に使用される鋼材であるが、中でも建設向け、自動車向けの割合が高く、これらの動向が業況を左右する。

国内の粗鋼(加工前の鋼)生産量は、人口減や経済成長の鈍化により漸減傾向にある。そのため、過剰となった生産設備の削減や、海外展開が成長のカギとなる。

高炉メーカーは、老朽化した高炉の休止、生産拠点の集約などの合理化計画推進を加速させている。また、成長が見込まれるインドや東南アジアなど海外における現地生産強化に動いている。

脱炭素への取り組みが重要課題に

石炭を原料とするコークスを燃焼させて製鉄する高炉は、大量のCO2を発生させる。鉄鋼業のCO2排出量は、国内の産業部門の約4割を占めている。

鉄鋼業のCO2削減は業界だけでなく、2050年のカーボンニュートラルを目指す国にとっても重要な課題となっている。そのような中で高炉メーカーは、既存設備の低炭素化に加えて、従来は難しかった電炉による高級鋼の生産や、水素エネルギーによる製鉄などの新技術開発に取り組んでいる。

原材料価格の変動が損益を左右

鉄鋼メーカーの多くは原材料在庫を総平均法で評価しており、原材料価格が変動すると、会計上の原料単価も変動する。

原材料価格が上昇すると、過去に安く調達した原材料が会計上の原材料単価を引き下げ、増益 要因となる。逆に原材料価格が下落すれば減益要因となる。

そのため、原材料の在庫評価差を除いた利益が、「実力ベース」での利益として重視される。


■市場の動向と展望

2021年度の市場動向

国内粗鋼生産量は、国内外経済の持ち直しを受け回復基調

日本鉄鋼連盟の「主要国粗鋼生産」によると、2021年(暦年)の世界の粗鋼生産量は前年比4.3%増の19億6,174万トンとなった。また、日本鉄鋼連盟の「鉄鋼需給統計」によると、2021年度の国内粗鋼生産量は前年度比15.5%増の9,563万7,000トンとなった。

国内外の経済が新型コロナの影響から持ち直しの動きを見せたことを受け、鋼材受注は大きく回復した。

普通鋼は、建設業で土木・建築向け以外の建築金物、付属資材、仮設材などの需要がとくに好調、製造業では産業機械・電気機械向けが大幅に回復した。特殊鋼もすべての需要分野で増加した。

自動車向けは同3.8%増。半導体・部品の供給不足による完成車の減産が響き、下半期の生産量が前年同期割れとなった。

輸出は、中国の経済減速の影響から同国向けが大きく減少したものの、ASEAN・韓国・米国向けが好調であったため、総体としては前年度に比べ増加した。

2022年度の市場動向

国内粗鋼生産量は、自動車生産の回復遅れなど需要低迷を受けて減少

日本鉄鋼連盟の「主要国粗鋼生産」によると、2022年(暦年)の世界の粗鋼生産量は前年比3.9%減の18億8,573万トンとなり、7年ぶりに前年を下回った。

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