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非鉄金属業界の動向と展望

(2023/11/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■銅・亜鉛・鉛製錬業、伸銅品製造業の業績動向
■アルミニウム製品製造業の業績動向
■非鉄金属卸売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図


■業界の概要

非鉄金属はベースメタル、レアメタル、貴金属に大別

非鉄金属とは「鉄以外の金属」の総称で、「ベースメタル」、「レアメタル」、「プレシャスメタル(貴金属)」に大別される。

銅、アルミニウム、亜鉛、鉛、スズは産出量が多く、電子部品・機械部品・建設資材など様々な分野で基礎資材として活用されていることから、「ベースメタル(常用金属)」と呼ばれる。ロンドン金属取引所(LME)での取引価格を基準に売買され、一時的な供給障害、新興国の需要変動、投機資金の流入などで、市場価格は大きく変動する。

採掘・製錬のコストが高く希少な非鉄金属は、「レアメタル(希少金属)」と呼ばれる。一般には、経済産業省が「安定供給の確保が政策的に重要である」として指定した、チタン、ニッケル、クロム、コバルト、リチウムなど31鉱種を指す。

「レアアース(希土類元素)」はレアメタルの1鉱種で、磁石に使われるネオジムやジスプロシウム、自動車用排ガス触媒に使われるセリウムなど17種類がある。

レアメタル・レアアースは、半導体・電子部品、電池、永久磁石といったハイテク製品の性能向上に欠かせず、製造業の国際競争力を左右するものとなっている。また、採掘地が偏在するものは政治的な取引材料とされることもあるため、その安定確保が重要な課題となっている。

サプライチェーンは鉱山開発、製錬、加工の3段階

非鉄金属のサプライチェーンは、「鉱山開発」、「製錬」、「加工」の3段階に大別される。

「鉱山開発」は鉱石を採掘して、金属の原材料となる精鉱を生産する工程。ただし国内の鉱山はほとんどが閉じられており、非鉄金属の鉱石は、ほぼ100%を輸入に頼っている。

「製錬」は、鉱石(精鉱)を溶解・電気分解して、純度の高い「地金」を製造する工程。地金はロンドン金属取引所(LME)の価格で販売され、その販売価格と原材料鉱石の調達費用との差である「製錬マージン(製錬加工費)」が、製錬企業の主な収益源となる。収入はドル建てが中心のため、円安が収益の追い風となる。

鉱石を輸入に頼る国内製錬業の業績は、為替や非鉄金属の国際市況に左右されやすい。また、世界の鉱山会社が再編統合により価格交渉力を増したことから、精錬マージンも縮小傾向にある。そのため各社は、収益改善と原材料の安定調達のため、海外鉱山の権利取得や自主開発を積極的に行っている。

アルミニウム地金を鉱石から製錬する一次製錬は、大量の電力を消費するため国内では行われておらず、全量を海外から輸入している。国内での地金生産は、アルミスクラップを溶解・鋳塊し、地金として再生する「アルミニウム二次製錬業(アルミニウム合金業)」が中心となる。

「加工」は、製錬された地金を加工し、製品化する工程。製法としては、引き延ばして板・箔に加工する「圧延」、金型穴から押し出して管・棒・線などに加工する「押出」、溶解させて金型に流し込み成形する「鋳造」、打撃を加えて圧縮・成形する「鍛造」、高圧で鋳造を行う「ダイカスト」などがある。


■市場の動向と展望

2021年の市場動向

銅生産は定期修理などで減少、アルミ二次合金地金は自動車復調で増加

経済産業省「生産動態統計調査」によると、2021年のベースメタル地金生産量は、銅151万6,684トン(前年比4.0%減)、亜鉛51万7,221トン(同3.2%増)、鉛19万6,569トン(同0.5%減)となった。

銅の生産減は、主要製錬所における定期修理が影響。アルミニウム二次合金地金は、自動車生産の復調を背景に129万3,753トン(同11.9%増)となった。

非鉄金属製品の生産量は、自動車向け需要の回復を受け大幅増

非鉄金属製品の生産量は、伸銅品77万5,002トン(前年比20.4%増)、アルミニウム圧延製品187万6,810トン(同9.6%増)、ダイカスト92万5,286トン(同10.3%増)となった。年の後半に減速はあったものの、自動車向け需要が急速に回復した。

2022年の市場動向

ベースメタル生産量、銅は増加もその他は減少傾向で推移

経済産業省の「生産動態統計調査」によると、2022年のベースメタル地金の生産量は、銅が155万6,452トン(前年比2.6%増)、亜鉛が51万6,638トン(同0.1%減)、鉛が19万2,855トン(同1.9%減)、アルミニウム二次合金地金が同9.6%減の116万9,568トンとなった。

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