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ホテル・旅館業界の動向と展望

(2026/08/31更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■ホテル・旅館業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ

■業界の概要

利用者・宿泊客に、多様な滞在・宿泊サービスを提供する

ホテル・旅館業界とは、利用者に宿泊サービスを提供する業界の総称である。ホテルや旅館をはじめ、ゲストハウス、カプセルホテルなど幅広い業態が含まれ、観光需要やビジネス需要を支える重要な産業となっている。

宿泊施設の営業には、法的枠組みとして旅館業法が適用される。2018年の法改正により、従来の「ホテル営業」と「旅館営業」は「旅館・ホテル営業」に統合され、現在は、「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業(ゲストハウス、カプセルホテル、山小屋など)」「下宿営業(1カ月以上の期間を単位とする宿泊)」の3区分で構成される。

また近年は、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく「民泊(住宅宿泊事業)」も普及しており、多様化する宿泊ニーズに対応する新たな宿泊形態として広がっている。

多様化する顧客ニーズや立地環境に応じ、主に以下のような種類に大別される。観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、施設タイプによって客室稼働率や需要の波に大きな差が見られるのが特徴である。

シティホテル

都心部に立地し、宿泊だけでなく宴会、挙式、レストランなど多目的な利用客を想定した総合型ホテル。ビジネス・観光双方の需要を取り込みやすく、比較的高い客室稼働率を維持する傾向がある。

ビジネスホテル

出張などのビジネス関連の宿泊を主目的とし、客室の合理化とサービスの効率化を追求した施設。近年は観光客(インバウンド含む)にも幅広く利用されており、宿泊特化型ながら高い生産性とトップクラスの客室稼働率を示す傾向にある。

リゾートホテル

海辺、スキー場、テーマパーク、温泉地などのリゾート地近くに立地し、レジャーや保養を目的に作られた施設。週末や長期休暇に需要が集中しやすく、平日との稼働率のギャップが課題となりやすい。

旅館

和室や温泉、日本伝統の食事や「おもてなし」の提供を主とする、日本固有の宿泊施設。従来は「1泊2食付き・人泊単位」での料金設定が中心だったが、近年は食事を提供しない「素泊まり」や「おひとりさま」向けなど多様な宿泊プランも増加している。

ラグジュアリーホテル

高水準の設備やホスピタリティ、洗練された空間デザインで、一人ひとりの顧客に合わせた特別な体験を提供する。客室単価(ADR)が極めて高く、富裕層やインバウンド(訪日外国人客)の宿泊を主軸とするため、海外需要の影響を受けやすい。外資系ブランドの進出や既存ホテルの建て替え・改装が活発化している。

新しいコンセプトのホテルが台頭

近年は、画一的なチェーンホテルとは異なる新しいコンセプトのホテルが台頭している。

その土地の文化や歴史を反映した個性的な空間づくりや洗練されたデザインを特徴とする「ブティックホテル」、特定のライフスタイルや価値観を持つ人々をターゲットにした「ライフスタイルホテル」が若年層やインバウンドを中心に支持を集めている。

また、人手不足への対応と利便性向上を目的として、非接触チェックインやスマートキー、音声アシスタントによる客室コントロールなどを活用した「スマートホテル」が増えている。さらに、持続可能性の観点から環境への配慮や社会的責任を重視する「サステナブルホテル」など、ESGやSDGsへの対応が重要な経営課題となっている。

ホテル業界における4つの運営方式

開発リスクの分散や運営効率化を目的に、土地・建物の所有とホテルの運営を分離する手法が一般的であり、主に以下の4つの経営形態に分類される。

自社所有・自社運営型

自社で保有する土地・建物を使ってホテル事業を展開する経営形態。資産を自社保有するため、ブランドのコントロールや独自のこだわりを反映しやすく、老舗高級ホテルや一部のラグジュアリーホテルなどでみられる。

フランチャイズ(FC)

加盟店(オーナー)が既存ホテルのブランド名や運営ノウハウ、予約システムを活用して事業を行う経営形態。全国展開する有名ホテルチェーンが本部となるケースが多く、地方都市のホテルなどで多くみられる。

リース(賃貸借)

ほかの不動産オーナーから土地・建物を借り受け、固定または変動の不動産賃料を支払いながらホテル事業を行う経営形態。駅前やインターチェンジ付近など好立地のビジネスホテル(宿泊特化型ホテル)で多く採用されている。

運営委託(マネジメント・コントラクト)

土地・建物を所有するオーナーから、ホテル運営の専門企業が委託(運営権)を受けて事業を行う経営形態。オーナーは運営ノウハウがなくてもホテルを所有でき、外資系のラグジュアリーホテルを中心に広く採用されている。

収益構造と主な経営指標

ホテルの主要な収益源は宿泊収入である。客室という「在庫の持ち越しができない商品」を扱うため、需要予測に基づいて価格を変動させる「ダイナミックプライシング(変動料金制)」の導入が一般的となっている。

経営分析においては、ADR(平均客室単価)と客室稼働率の掛け合わせで算出される「RevPAR(販売可能客室1室当たり売上高)」が重要な指標として用いられる。

販売チャネルの最適化(チャネルミックス)も利益率を大きく左右する。自社予約サイト経由の予約は利益率が高い一方、集客力の高いOTA(オンライン旅行会社)の活用は手数料が発生するため、双方のバランスを保つ販路構成が重要である。

そのほか、宿泊以外の収益源として、館内レストランなどの料飲収入、結婚式や国際会議などの宴会収入、スパや売店などの付帯サービス収入があり、特にフルサービスホテルにおいてはこれらのポートフォリオ管理が全体の業績を決定づける。

人手不足や宿泊施設の老朽化など構造的な課題に直面

ホテル・旅館業界は、複数の深刻な構造的課題に直面している。特に深刻な課題としては、慢性的な人手不足が挙げられる。他産業に比べて低い賃金水準や休日数の少なさ、夜勤を含む不規則な勤務体制といった労働環境が背景にあり、需要があるにもかかわらず客室を提供できない「売り止め」を招き、稼働率の上限を狭める要因となっている。

さらに、近年の物価高騰にともなう光熱費やリネンサプライ費、アメニティ等の消耗品費、食材費の上昇が、客室単価(ADR)が上がっても利益を圧迫する要因となっている。これに加え、1980年代の需要急増期に建設された宿泊施設の老朽化も深刻であり、建物の構造に応じた耐用年数を経過する施設が増えている。顧客獲得に直結する外観や内装の維持には多額の改修・修繕資金が必要となり、計画的な資金調達に加えて、高騰する工事費用が大きな壁となっている。

これらの課題に対し、業界では自動チェックイン機や清掃ロボットの導入といった「IT・DXによる省力化」が進む。有形・無形の設備投資を通じて業務効率を高め、労働生産性の向上を従業員の待遇改善へ還元する好循環の構築が持続可能な経営に向けて求められている。

また、特定の地域や時期に観光客が集中することで生じる「オーバーツーリズム(観光公害)」への対策も急務となっている。

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