TDB REPORT ONLINE

土木工事業界の動向と展望

(2026/07/31更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■土木工事業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ

■業界の概要

公共工事を主体とする収益構造

土木工事は、社会インフラ整備や災害防止のための公共的な構造物を造成する。代表例としては道路、トンネル、空港、鉄道、橋梁、ダムなどの建設や、鉄道、河川、上下水道、港湾などの工事が挙げられる。本レポートでは総合土木工事業のほか、「交通インフラ分野」(道路・橋梁・トンネル・鉄道土木など)、「国土インフラ分野」(地盤改良・法面・基礎工事など)、「海洋インフラ分野」(港湾・浚渫・海洋構造物など)を担う企業群を主な対象とする。

需要の中心は、国や地方公共団体、高速道路会社などが発注する公共土木工事で、元請受注高の6割超を占める。防災・減災、国土強靱化、道路ネットワーク、治水、港湾、上下水道などの政策や予算が受注環境を左右するため、住宅・建築市場と比べて公共投資の影響が大きい。一方、鉄道、電力、ガス、通信、製造業の構内設備、物流施設の外構・造成など、民間企業による土木需要も一定の市場を形成している。

新設工事に加え、高度経済成長期以降に整備された社会資本の老朽化を背景として、それらの点検、補修、更新、耐震化が、中長期的な需要基盤となる。

また近年は、地球規模での気候変動により、自然災害による被害が増加している。とくに台風や大雨による風水害が目立つことから、河道整備・堤防の補強・土砂災害対策といった治水インフラの強化や、都市部における住宅・交通機関の防排水機能の強化などが進められている。

元請・専門工事が重層的に分業

業界は、ゼネコンを頂点とした重層請負構造となっている。元請企業は発注者との契約、施工計画、工程・品質・安全管理、専門工事間の調整を担い、実際の施工工程では各工種に強みを持つ専門工事業者との分業が広く行われる。

受注産業であるため、収益は工事量だけでなく、受注時の採算管理、資材・燃料・労務費の変動、設計変更の反映、工期管理、現場配置の効率によって左右される。大型工事では受注から完成まで複数年度にわたるため、受注残が将来の売上高を支える一方、施工能力を上回る受注や採算性の低い案件は利益率を圧迫する。

人手不足と技術の承継が課題に

最大の構造的課題は、技能者・技術者の減少と高齢化である。土木工事を含む建設業の就業者数は478万人(2025年3月末)で、1997年同月の685万人からは200万人以上減少している(総務省「労働力調査」)。土木工事は施工現場が広域に分散し、屋外作業や災害対応をともなうことも多いため、人員不足は受注可能量や工期に直接影響する。

老朽インフラの更新、防災・減災、災害復旧などにより安定した需要が見込まれる一方、供給側の人員・施工能力の制約は強まっている。このため、今後の土木工事市場では、単純な受注量の拡大よりも、適正価格での受注、工事平準化、省人化投資、得意工種への選択と集中などが重要になる。

その対策の一つとして、ICT施工、BIM/CIM、遠隔臨場、自動・遠隔施工、プレキャスト化、施工データの連携などが進む。国土交通省は「i-Construction 2.0」において、施工、データ連携、施工管理のオートメーション化を柱とし、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍へ高める目標を掲げている。

海外市場の開拓

公共工事を柱とする土木工事業界は、国内市場への依存度が高い。国内需要は国土強靭化や老朽インフラ整備などから安定して発生することが見込まれるが、市場が拡大するような大型プロジェクトは限られる。

一方、海外では新興国や開発途上国において旺盛なインフラ整備需要が発生していることから、その獲得に向けて、国は2013年に「インフラシステム輸出戦略」を策定し、その後も改訂しながら推進している。

2024年12月に策定された「インフラシステム海外展開戦略2030」では、2030年までにインフラ海外受注額45兆円を目標に掲げ、相手国との共創を通じた日本企業の「稼ぐ力」と国際競争力の強化を図る。その具体的施策として2025年6月に公表された「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画(令和7年版)」では、トップセールスや政府間対話による案件発掘、案件形成段階から施設整備後の運営までを見据えた取り組み、スタートアップ・中小企業の参入や、人材育成の促進、経済安全保障上、重要なインフラへの積極的関与、グローバルサウスとの連携、防災、GX・DX技術の展開などの施策が示された。

インフラシステム輸出の現地施工は主に現地労働者が担うため、国内の労働者不足に直接影響するものではない。しかし、大型案件の管理を担う技術者・プロジェクトマネジメント人材が国内外で共通して逼迫していることは懸念材料となる。

この続きを読むには会員ログインが必要です。
ログイン