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不動産業界の動向と展望

(2024/08/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■不動産賃貸業(住宅系賃貸を除く)の業績動向
■不動産仲介業(住宅系賃貸を含む)の業績動向
■サブリース業、不動産投資業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図

■業界の概要

開発・分譲、賃貸、管理、流通・仲介、資産運用と事業領域は多岐

不動産業は、主に「開発・分譲」「賃貸」「管理」「流通・仲介」「資産運用」の事業領域に分類される。開発・分譲はデベロッパーとも呼ばれ、土地の取得から戸建住宅やマンションなどを建設し販売する。賃貸は賃貸物件の運営管理やテナントの募集、契約、管理などを行う。管理は建物の所有者に代わって、賃貸管理・建物管理(清掃・修繕など)・入居者対応(家賃集金・クレーム対応など)を行う。流通・仲介は土地建物の売買・交換・賃貸の仲介や住宅分譲の販売代理を行う。資産運用は投資家から集めた資金で不動産に投資し、そこで得る賃料収入を投資家に分配する。

これらの事業領域は住宅地や商業地、オフィスビル、物流施設、ホテル、データセンターなど多岐にわたり、企業によって得意分野も異なる。財務省の法人企業統計調査によると、不動産業は23年度に全産業の売上高の3.5%(約56兆円)を占めており、大手総合デベロッパー(三井不動産、三菱地所など)をはじめ、地域密着型の中小企業や近年台頭しているITやデジタル技術を活用して不動産業界の課題解決や業務効率化を図る不動産テック企業もプレイヤーとして活躍している。

人口減少に伴う空き家や遊休不動産の増加が課題

不動産市場は、景気や金融政策の影響を強く受ける特徴がある。特に日銀の金利政策は住宅ローンの利率や不動産投資の利回りに直結する。2020年代においては、超低金利政策が長らく続いたことで、不動産価格が高騰する場面もあった。

一方、人口減少や少子高齢化による空き家問題、地方の地価下落など、構造的な課題も進行している。都市部では再開発が活発に行われている一方で、地方では需給バランスの崩れによる空室率の上昇が深刻化している。

今後直面する課題としては、空室リスクや資産価値の下落、建設コストの上昇、人手不足などがある。これに対して、デジタル技術の活用(不動産テック)やESG対応(環境配慮型の建築・運営)といった取り組みが進められている。

たとえば、AIによる価格査定、ブロックチェーンを活用した契約の効率化、VRによる非対面内見などが実用化されつつある。また、国や自治体による都市再開発支援、地方創生の流れと連携する形で、今後は地域に根差した開発や資産運用のニーズも拡大する可能性がある。

中長期的には「人口減少社会への対応」「環境配慮」「デジタル化」が業界の持続的成長に向けた三本柱となり、不動産業は単なる物件取引の枠を超えた社会インフラ産業へと進化していくとみられる。

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