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酒類業界の動向と展望

(2024/11/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■酒類製造業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ

■業界の概要

アルコール離れが加速し、1人あたりの酒類消費20年間で2割減

酒税法によると、酒類とは「アルコール分が1度以上の飲み物」を指す。製法や性状によって、①発泡性酒類(ビール、発泡酒など)、②醸造酒類(清酒、果実酒など)、③蒸留酒類(ウイスキー、スピリッツなど)、④混成酒類(合成清酒、みりん、リキュールなど)の4種類に分類され、その分類ごとに異なる税率を適用することを基本とする。なお、4種類に分類された酒類は、さらに17品目の酒類に区分される。

国税庁の「酒のしおり」によると、2022年度の酒類消費量は782万リットルと、ピークの1996年度(965万リットル)に比べて18.9%減少している。人口減少や健康志向の高まりに加えて、若者のアルコール離れなどが背景にある。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、酒類を「飲まない」「やめた」「ほとんど飲まない」という人は5割以上に上る。「飲酒習慣のない人」は全体の8割、20歳代では9割に達する。この傾向は今後も続くとみられ、酒類需要は減少が続くと予想される。

消費者の嗜好の多様化に対応

近年、ビール消費量の減少に直面する大手ビール各社は、RTD(開栓後そのまますぐ飲めるタイプのアルコール飲料)市場に注力している。また、消費者の嗜好が多様化する中、カロリーや糖質割合の低い健康志向の商品やクラフトビール、ファインワインなどの高付加価値商品の展開を進め、収益基盤の強化を図っている。

ノンアルコールビールなどの酒類風味のノンアルコール飲料市場も拡大している。新型コロナウイルスの感染拡大で酒類提供の自粛を要請されたため、飲食店が酒類の代わりに提供するようになり、注目を集めた。アルコール度数だけでなく、カロリーや糖質、プリン体がゼロの商品も発売されたほか、機能性表示制度により、「内装脂肪を減らす」「糖の吸収をおだやかにする」とうたった商品も投入されている。

しかし、RTD市場は2026年10月から酒税が現在の1キロリットルあたり8万円(350ミリリットル換算28円)から10万円(350ミリリットル換算35円)に引き上げられる予定となっており、その販売への影響が懸念される。

酒類の地理的表示、24年11月までに29地域

国税庁はお酒の産地や品質を保証する「地理的表示(GI)」に酒類を指定している。生産者は国に地域や品質を保証してもらうことができ、消費者は原産地偽証による被害を避けられるなど、両者にメリットがある。1994年に定められたガイドラインが2015年に改訂され、地理的表示の表示方法など基準が明確に定められた。焼酎の「壱岐」(長崎県壱岐市)、清酒の「」(山口県萩市)などを指定したほか、原料の米に日本国産米のみを使い、国内で製造した清酒だけを「日本酒」と名乗れるように、「日本酒」という名称を地理的表示に指定している。

24年11月までに、「日本酒」を含め、29地域が酒類を指定されている。内訳は、清酒が18地域、ぶどう酒が5地域、蒸留酒(焼酎、泡盛)が5地域、その他の酒類(リキュール)が1地域。

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