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半導体・電子部品業界の動向と展望

(2024/03/28更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■半導体製造業の業績動向
■半導体・FPD 製造装置製造業の業績動向
■電子部品製造業の業績動向
■半導体・電子部品商社の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図


■業界の概要

半導体はメモリ、ロジック、アナログ、パワーなどに大別

「半導体」は、電気を通す「導体」と通さない「絶縁体」の性質を合わせ持つ物質で、その特性を活用した電子部品を「半導体素子(半導体デバイス)」と呼ぶ。経済・ビジネス分野において「半導体」という場合には、素材としての半導体ではなく、半導体素子を指すことが多い。

半導体素子には、主に電流の方向を制御する「ダイオード」、電気信号のオンオフ・増幅などを行う「トランジスタ」、光・音・温度・圧力などを電気信号に変換する「センサー」、電気エネルギーと光エネルギーを相互に変換する「光電素子(光半導体)」などがある。

単一の機能を持つ半導体素子を「個別半導体(ディスクリート)」と呼ぶ。反対に、さまざまな半導体素子を組み合わせて高度な機能を持たせたものを、「集積回路(IC)」と呼ぶ。

用途・機能別には、情報を保存する「メモリ」、論理演算を行う「ロジック」、アナログ信号の制御やデジタル信号との変換を行う「アナログ」、大きな電流・電力を制御する「パワー」などに大別される。近年は、生成AIの勃興やクラウドサービスの拡大でロジック半導体の重要性が、省エネルギー分野でパワー半導体の重要性が高まっている。

メモリではサムスン電子(韓)、ロジック半導体ではパソコン用プロセッサのインテル(米)やAI(人工知能)用チップのエヌビディア(米)、パワー半導体ではインフィニオン・テクノロジーズ(独)、アナログ半導体ではテキサス・インスツメンツ(米)などが代表的企業。

また半導体メーカーには、他社が設計した半導体の生産を専門に請け負う「半導体受託生産会社(ファウンドリ)」があり、半導体の製造工程が複雑化・高度化していく中で欠かせない存在となっている。代表的な企業としてはTSMC(台湾積体電路製造)がある。

日本企業ではソニーが画像センサーで世界シェアトップを占めるが、全体としてはシェアや技術力で米国・韓国・台湾企業の後塵を拝している。電子情報技術産業協会(JEITA)の「電子情報産業の世界生産見通し2023」によると、世界市場における日系企業のシェアは8%(推計)にとどまる。

電子部品は能動部品、受動部品、機構部品に大別

「電子部品」とは、電子回路を構成する部品全般を指す。半導体素子も電子部品のひとつであるが、一般には半導体素材で作られた電子部品を「半導体」、それ以外の電子部品を「電子部品」と呼び、分けて考えられることが多い。

電子部品は、電気信号の増幅・変換などを行う「能動部品」、電流・電圧を調整する「受動部品」、電気信号を伝達する「機構部品」に大別される。能動部品には主に半導体が該当し、受動部品(抵抗、コンデンサ、インダクタ(コイル)など)、機構部品(スイッチ、コネクタ、プリント基板など)が狭義の電子部品にあたる。

日本企業の競争力は高く、電子情報技術産業協会(JEITA)の「電子情報産業の世界生産見通し2023」によれば、世界市場における日系企業のシェアは33%と推計されている。

幅広い産業の基盤を支える

半導体・電子部品は、家電やパソコン・スマートフォンなどの情報機器、通信機器、自動車、医療機器、産業用ロボットなど、あらゆる機械製品に不可欠な構成要素となっている。その半面、これら需要先産業の動向によって、業況が大きく左右される。

自動車の電装化・電動化、情報機器の小型化・高機能化、通信インフラの高速・大容量化、脱炭素に向けた省エネルギー化などにともない、半導体・電子部品に対する新たなニーズが次々に生まれている。技術革新のスピードが極めて速い産業であり、これに対応するためには機動的かつ積極的な設備投資が必要となる。

しかし、とりわけ半導体は生産設備に巨額の投資を必要とするため、タイミングよく生産体制を整えることが難しい。そのため需給バランスが崩れやすく、一定周期で好不況のサイクルを繰り返す傾向がある(シリコンサイクル)。

国内半導体産業復権に向けた動きが相次ぐ

日本の半導体産業は、1980年代には世界のトップに位置していたが、米国との貿易摩擦解消のために締結した日米半導体協定(1986年)、バブル崩壊後の経済停滞、台湾・韓国企業の台頭などによって競争力が低下。2023年の世界市場における半導体メーカーの売上高ランキング上位10社に日本企業は1社も入っていない。また、電子機器の頭脳となるロジック半導体の製造技術でも遅れを取っている。

半面、半導体製造装置や半導体素材の分野では、日本企業が高い競争力を維持している。電子部品産業の競争力も高く、特定の部品でトップシェアを占める企業が多数存在する。

デジタル社会を支える基盤、安全保障に直結する戦略物資として、半導体はじめ先端電子部品の重要性はますます高まる。そのような中、国内メーカーへの資金援助、海外メーカーの工場誘致など、政府による支援策が相次いで打ち出されている。

2022年8月には、ソニー、トヨタ自動車、デンソー、キオクシア、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行の国内8社が出資し、最先端ロジック半導体の国産化を目指す新半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」(東京都千代田区)が設立された。


■市場の動向と展望

2021年の市場動向

コロナ特需で半導体市場は拡大

WSTS(世界半導体市場統計)の発表によると、2021年の世界半導体市場は、前年比26.2%増の5,558億9,300万米ドルだった。

また同年の日本の半導体市場規模は、前年比19.8%増の436億8,700万米ドル。為替変動を加味した円ベースでは、同23.4%増の約4兆8,038億円であった。

半導体市場は前年の流れを引き継ぎ、幅広い用途での強い需要を背景に高成長となった。電子機器の高機能・高効率化による半導体搭載金額の上昇に加え、コロナ禍を受けたテレワークや巣ごもり需要による特需が追い風となった。

国内電子部品生産額も2桁増に

経済産業省の「生産動態統計調査」によると、2021年の国内電子部品生産額(変換部品、メモリ部品除く)は、前年比18.2%増の2兆8,922億円となった。自動車の電装化進展や、リモートワーク用途などで堅調なパソコン需要により、大幅増となった。

2022年の市場動向

インフレ・利上げ・地政学的リスクを背景に、半導体市場の成長は鈍化

WSTS(世界半導体市場統計)の発表によると、2022年の世界半導体市場規模は前年比3.3%増の5,740億8,400億円だった。世界的なインフレや利上げ、地政学的リスクの高まりなどにより、個人消費や企業の設備投資意欲が減速したことから、成長が鈍化した。

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