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プラスチック業界の動向と展望

(2024/12/26更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■プラスチック・同製品製造業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図

■業界の概要

軽量性・成形性・耐久性・低コストの特性から幅広い分野で利用される

プラスチックとは、主に石油を原料とした高分子化合物を指し、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に大別される。熱可塑性樹脂は、加熱により何度も成形可能であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどが代表的でありペットボトルやビニール袋、食品包装などに使用されている。一方、熱硬化性樹脂は一度硬化すると再形成が困難で、エポキシ樹脂やフェレール樹脂が主な例で、自動車部品や家電製品、茶碗などの食器製品などに使用される。

プラスチック業界は、石油化学産業の一角として形成され、業界構造としては、モノマー(低分子化合物)を重合してポリマー(高分子化合物)を製造する大手総合化学メーカーがあり、業界の上流に位置する。中流には、化学メーカーで製造されたポリマーを用いて押出・射出・ブロー成形などの技術で部品や中間製品を製造する加工業者が存在し、下流には最終製品を供給する各種製造業者、リサイクルおよび廃棄処理業者が含まれ、複雑かつ広範なサプライチェーンが構築されている。

このようにプラスチックは軽量性、成形性、耐久性、低コストといった特性を持つことから、自動車や家電、建築、包装、医療など多岐にわたる分野で利用されており、利用の裾野は広い。

環境問題の深刻化で「使い捨て」から「回収・再資源化」への対応が急務

プラスチック廃棄物による環境負荷や海洋汚染、マイクロプラスチック問題が深刻化する中、世界各国でプラスチック廃棄物削減に向けた規制や取り組みが進んでいる。欧州を中心とする使い捨てプラスチックの規制強化、中国による廃プラスチック輸入禁止措置(2018年)などが、日本のプラスチック業界にも大きな影響を与え、従来の「製造・使用・廃棄」モデルから「回収・再資源化」への転換が求められ、業界全体での対応が急務となっている。

日本国内では、2022年4月の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」施行などにともない、プラスチックのライフサイクル全体に対する責任が企業や消費者に求められるようになった。政府は3R(Reduce、Reuse、Recycle)推進の法制度を整備しているが、現時点では多くの取り組みが努力義務にとどまっており、実効性の確保が課題となっている。今後も、法制度の見直しや支援措置の充実、技術開発などを通じて、官民を挙げてより効果的な資源循環の仕組みを構築することが求められる。

持続可能な社会に向けて、リサイクル技術と新素材開発が加速

2020年代に入ると、脱炭素社会の実現を目指すグリーントランスフォーメーション(GX)やSDGsの潮流により、業界のイノベーションが加速している。各社は環境負荷の低減と持続可能な社会の実現を目指し、ケミカルリサイクル技術の向上や新素材の開発と導入に注力している。

従来の機械的リサイクルでは、使用済みプラスチックを細かく砕き、再び成形して利用するが、品質劣化や異素材混入品への対応が課題であった。これに対し、ケミカルリサイクル技術は、廃プラスチックを化学的に分解し、モノマーや油、ガスといった原料に戻すことで、バージン材に近い高品質な再生プラスチックを生み出す。食品容器など高い品質基準が求められる用途にも対応できるため、リサイクル率向上の切り札と期待されている。

また、バイオマス由来のプラスチックや海洋生分解性プラスチックなど、環境負荷を低減する新素材の開発も進み、これらの技術革新が持続可能な社会の実現に向けて後押ししている。高機能プラスチックやスマートマテリアルの研究が進み、循環型かつ持続可能な産業モデルへの転換機として新たな市場機会の創出が期待されることから、既存プレイヤーだけでなくスタートアップや異業種からの参入も増加している。

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