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建設業界の動向と展望

(2025/07/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■建設業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ

■業界の概要

建物や構造物の新設、改修、解体などを請け負う

建設業界とは、建物や構造物の設計、施工、改修、修繕、解体などを請け負い、施工する産業を指す。

建設業は、「総合工事業」「職別工事業」「設備工事業」の三つに大別される。

「総合工事業」には建築一式工事および土木一式工事が含まれ、建築物や土木施設を総合的に完成させる事業者を指す。「職別工事業」は、左官、大工、鉄筋、塗装など、特定の専門工事を請け負う事業者を指す。「設備工事業」は、電気・管・機械器具などの設備に関する工事を行う事業者を指す。

ここでは主に「総合工事業」について述べる。

スーパーゼネコンを頂点とした多段階の受注構造

建設業は典型的な受注請負産業であり、工事ごとに規模や仕様が異なる。これによる業務量の変動に柔軟に対応するため、元請けから二次請け、三次請けへと多段階の受注体制が構築されている。

元請け業者として工事を発注者から請け負い、二次受け以降の受託事業者を取りまとめて工事全体を管理する建設業者を、ゼネラル・コンストラクター(総合建設業者、ゼネコン)と呼ぶ。中でも鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店の上位5社は「スーパーゼネコン」と呼ばれる。

建設投資は70兆円台に回復も、建設コストは上昇傾向

国内の建設投資はバブル崩壊以降、1992年度の約84兆円をピークに減少が続き、2010年度には約42兆円まで落ち込んだ。その後は東日本大震災の復興需要や東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた建設需要、企業設備投資の回復、インフラ更新需要、災害対策などにより回復に転じ、近年は70兆円前後で推移している(国土交通省「建設投資見通し」)。

バブル崩壊以降の急激な建設投資の減少により競争が激化し、建設会社の利益率は低下、労働条件も悪化した。その後、建設投資の回復により利益率は改善に向かったが、近年は資材価格や人件費の上昇により、再び利益は圧迫される傾向にある。

そのため大手ゼネコンにおいては、採算性を重視し、受注を選別する傾向が強まっている。

人手不足と高齢化が深刻化

建設業界において深刻な課題の一つが、人手不足と高齢化である。

建設業許可(登録)業者数は、2000(平成12)年の60万980事業者をピークに、2018(平成30)年には46万4,889事業者にまで減少した。その後は徐々に増加に転じているが、2025(平成7)年の事業者数は48万3,700事業者とピーク時の8割にとどまる(国土交通省「建設業許可業者数調査」)。また、建設業の就業者数は477万人(2024(平成6)年)で、1997(平成9)年の685万人からは200万人以上減少している(総務省「労働力調査」)。

就業者の減少に加え、その高齢化も深刻化している。「令和7年度 国土交通白書」における「産業別就業者の年齢構成比」を見ると、建設業就業者のうち55歳以上の割合は36.7%(全産業では32.4%)に達している一方、29歳以下は11.7%(同16.9%)にとどまる。

人手不足により、工期の遅延や人件費高騰による建設コストの増大などが顕在化しつつある。また将来的には、若年層の建設業離れにより熟練工の持つ技術が継承されず、業界全体で品質や生産性が低下することも懸念されている。

「働き方改革」やDXへの取り組み

そのような中、業界では、待遇改善による人材確保や、ITによる生産性向上などの対策が、官民によって進められている。

待遇改善については、「働き方改革関連法」における残業時間の上限規制が、2024年4月に建設業にも適用された。また、業界団体である日本建設業連合会は、建設業における週休2日制に当たる「4週8閉所」の定着を目指している。

2024年6月には、建設業の就労者の確保・育成において重要な役割を果たす「担い手三法(建設業法品確法入契法)」の一体改正が行われた。

生産性向上については、2024年4月に、国土交通省が2016年度から推進しているITによる建設現場の生産性向上策「i-Construction」の第2弾となる、「i-Construction 2.0」が公表された。

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