■業界の概要
■市場の動向と展望
■繊維製造・紡績業の業績動向
■繊維商社の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
日本の繊維産業は、衣料、家庭用、自動車用、医療用、スポーツ・アウトドア用、航空宇宙用など多岐にわたる繊維製品の製造・販売を行う国内の重要な基幹産業である。また繊維原料の生産から最終製品の製造、流通に至るまで、様々な工程に分かれており、それぞれの工程において異なる構造が存在し、裾野が広い業界でもある。
国内では、輸出産業の柱として経済成長の発展を支え、高度成長期には国内需要の拡大とともに市場も拡大したが、1985年のプラザ合意以降の円高により、輸出での競争力を失った。その後は、需要の落ち込みや競争力の低下から、汎用品の生産拠点は中国やASEAN 諸国地域へ海外移転が進み、国内の事業所数・従業者数は減少。2014年に100万トンを超えていた国内の繊維生産量は減少基調にある。
こうした中、環境問題に対応したエコテキスタイルやリサイクル繊維製品、スマートテキスタイルや電子繊維などの新分野、介護用繊維製品や医療用繊維製品など、様々な分野での技術革新による高機能素材の開発が進んでいる。
繊維業は、原材料価格の変動や為替レート、消費者動向などにより収益が左右され、なかでも、見込み生産による在庫が収益の圧迫要因となっている。
また、大量生産・大量廃棄による環境負荷が世界的な課題となっており、既に欧州では、繊維製品の環境配慮対応やサステナビリティへの取り組みが加速している。そのため、国内の繊維産業が海外市場で競争力を強化していくには、環境負荷の軽減が重要となっている。
2024年3月には、国内繊維製品の環境配慮設計に対する取り組み推進などを目的に、経済産業省が「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」を策定し公表した。同ガイドラインでは、環境配慮設計項目および評価基準などを整理している。
業界各社においても、環境配慮設計として使用済み繊維の再資源化や植物由来原料の使用、製造工程における省エネルギーやGHG(温室効果ガス)の排出抑制などの取り組みが行われているほか、業界を超えた企業間の協業も加速している。