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百貨店業界の動向と展望

(2025/08/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■百貨店の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図

■業界の概要

購買チャネル多角化やコロナ禍を経て、業界再編が進む

百貨店は、主要都市中心に展開する全国展開型百貨店と、地方都市を拠点とする地方百貨店とに大別される。

購買チャネルの多様化や人口減少で市場縮小が続く中、業界内では合従連衡が続いており、日本百貨店協会の加盟店舗数もピーク時の1999年末の311店から、2025年8月時点では167店に減少している。

2006年にそごうと西武百貨店がセブン&アイホールディングス(7&i)傘下へ入り、両社は2009年に合併後はそごう・西武として展開。2007年には大丸と松坂屋ホールディングスが統合してJ.フロントリテイリング(JFR)が発足した。

2008年には三越と伊勢丹が統合し三越伊勢丹ホールディングスが発足したほか、同年にはエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の阪急と阪神両百貨店の合併が実現した。

2009年2月には髙島屋とH2Oが資本提携、翌年3月には業務提携したほか、2016年にはH2Oが7&iと業務提携に合意していた。

しかし、その後髙島屋とH2Oが2022年11月に資本提携を解消、同年にはH2Oと7&iが業務提携を事実上解消した。2023年9月には7&i が、そごう・西武の全株式を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへ譲渡するなど、業界再編が続く。

近年は、都市部の再開発にともなう旗艦店舗の建て替えや大規模リニューアルが進む一方で、不採算店舗や地方百貨店の閉店が続き、市場の二極化が進んでいる。

消費行動変化でオムニチャネル戦略を推進、新世代の顧客層開拓は必須

インターネットとモバイル技術の進化により、オンラインショッピングが急速に普及し、消費者の購買活動が大きく変化している。そのため、百貨店業界においても、オンラインプレゼンスの強化やeコマースプラットフォームの整備が求められている。特に、顧客が店舗で商品を確認しオンラインで購入する、あるいはその逆を行うことが一般的になり、オンラインとオフラインを統合した「オムニチャネル戦略」が重要性を増している。

こえした変化に対応するため、百貨店もシームレスな購買体験を提供するための技術投資を進めている。AIやビッグデータ、IoTといった先端技術の導入により、顧客の嗜好に応じたパーソナライズされた接客や効率的な在庫管理が可能となり、業務効率の向上と顧客満足度の向上が期待されている。また、百貨店の強みとして、単なる商品販売だけにとどまらず体験型サービスを提供することで、消費者に新たな魅力を提供する機会を強化している。例えば、店内でのイベントやワークショップ、ポップアップストアの展開、カフェ併設といった施策が挙げられる。

また、環境意識の高まりに応じて、エコフレンドリーな商品やサービスの提供、店舗運営のサステナビリティが求められており、環境に配慮した取り組みを進める。

一方でこうした変化にともない、オンラインショッピングやディスカウントストアとの競争激化により、価格競争や差別化戦略がより重要となっている。若年層を中心に消費者行動の変化は顕著であり、従来の百貨店モデルでは適応しきれていない顧客層として、特にミレニアル世代やZ世代に対するマーケティング戦略の再構築が必要となっている。

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