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中小企業基盤整備機構は、全国に9つの地域本部があり、財務や人事、マーケティングなど中小企業の経営に関する様々な相談が、日々寄せられている。相談件数は年間5,000件を超え、その支援方法は最新情報の提供からセミナー開催、経営分野の専門家を派遣する「ハンズオン支援」など多岐にわたる。今回、2020年度から同機構が取り組む中小企業の経営を強靱化する「事業継続力強化計画」策定支援について、同機構本部の事業継続力強化支援担当課長 早川 光明 氏、北陸本部の企業支援課長 打田 覚志 氏の両氏に聞いた。

- 2019年に国による「事業継続力強化計画」認定制度がスタートして3年目を迎えます

2021年3月末時点、全国で約2万5,000件の中小企業が、国から「事業継続力強化計画」の認定を受けています。BCP(事業継続計画)策定は重要な経営課題のひとつですが、最初からBCP 策定となると、中小企業にとってはどうしてもハードルが高い。当機構では「事業継続力強化計画」をBCP に向けた入り口として位置づけ、シンポジウムや演習付のセミナーなどを通じて、先行事例や事前対策の効果をまず「知る」ことから勧めています。そして、専門家や支援機関などを活用し「習得する・作る」、認定取得後のフォローアップを通じ「改善する」とステージに応じて必要な支援を提供しています。

- 防災・減災に主眼が置かれた「事業継続力強化計画」ですが、新型コロナの感染拡大で変化は

計画の対象を自然災害だけではなく、感染症対策に広げています。新型コロナについては、感染が拡大するにつれて、感染者が判明した場合、どのように地域を守るか、被害を最小限に抑え顧客に迷惑をかけないようにするか、という相談を多く受けるようになりました。

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経営支援部 早川 光明 氏

認定事例のひとつに、2021年2月に認定を取得した会宝産業(石川県金沢市)があります。同社は中古自動車のリサイクル事業や自動車部品の海外輸出を手がける企業で、もともとBCP 策定に関心をお持ちでした。当機構の支援メニューに関心を持ったことがきっかけで、認定取得に取り組むことになりました。計画策定過程で、工場の立地地盤が弱く、災害時には地盤沈下や液状化が発生し工場が利用できなくなるリスクを認識されました。災害時の対応について社内でディスカッションを重ね、周辺道路が不通となった場合の対策、物流の確保、備蓄品、社員の安全確保などの視点を盛り込んでいます。準備過程で新型コロナの感染拡大があり、社員の安全と取引先への供給責任をどう守るのかという点をより強く意識し、感染症対策も計画に含めています。

認定取得後の現在は、緊急時に国内外のサプライチェーンを維持するため、同業者と連携した新たな計画策定に取り組まれています。

- 企業が「事業継続力強化計画」策定に取り組むきっかけは

セミナーでの演習で実際に計画策定を経験して「これは進めていかないと」と踏み出される経営者は多いです。代表交代もひとつのタイミングです。事業承継後、新経営者が成長に向けた供給責任、社会的責任、社員の安全確保などについて改めて考え、計画認定を取得する事例があります。また、取り組むきっかけは低利融資などの金融支援や税制措置などのインセンティブ目的であっても、ハザードマップで水没のリスクがあると判明して、関係者の意識が一変した事例もあります。新型コロナ感染拡大で、自然災害に限らず、各種のリスクに対する事業継続対策への関心はより高まっています。

-「 事業継続力強化計画」策定にあたって注意するポイントは

中小企業庁のサイトに掲載されているマニュアル等を参照することで、基本的な構成の計画は策定できます。その場合、計画上では記載されていても実際に回らないことがないか注意が必要です。企業の経営層だけで計画を策定し、計画が現場に浸透していないとその恐れがあります。それを防ぐためには、業務を実務レベルにまで棚卸しリスクを洗い出すことが必要です。計画が緊急時に機能しない画餅になってしまっては意味がありません。定期的に訓練する、連絡網が実際につながるか確認する、複数企業で共同防災訓練する、といった実際の確認が有効です。

- PDCAサイクルによる検証改善ですね

自社の視点だけで計画策定するとリスクに気づかないことがあります。支援機関や専門家など第三者の視点を入れて「気づき」を得ることも有効でしょう。定期的な検証と改善が必須です。当機構の支援においても、その点を重視しています。

-「 事業継続力強化計画」には「単独型」と「連携型」がありますね

企業単独の「単独型」に対して、複数の企業や組織が参加する「連携型」の認定件数は145件(2021年3月末時点)にとどまっていますが、これから広がりを見せる分野と考えています。

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北陸本部 打田 覚志 氏

北陸地域での「連携型」の事例をご紹介すると、2020年冬の大雪による高速道路の立ち往生を契機として、福井市の小規模運送業者が連携型計画の認定を取得されました。災害時の緊急物資の運送など1社単独で解決できないことを、複数企業が連絡を取り合い計画的に運送する仕組みです。連携体によって、災害に備え地域を守るのです。福井県内では災害時にショッピングセンターが連携して対応しようという動きも始まり、セーフティネットが点から面へ拡がっています。

また、富山県では、2021年2月に産業機器や自動車部品など異業種43社が連携し、災害発生時に業種を超えて相互支援する計画が認定されました。災害への備えを契機として、異分野連携や平時の生産活動の連携につながっています。

- これから取り組む企業へアドバイスをお願いします

まず、自社のリスクの認識をすることです。ハザードマップの確認をスタートとして、どのような災害が起きやすいのか、それにどう対応するのか。最初から完璧を目指さず、必要最低限の内容から作ってみることです。実際の訓練を通じて、課題が発見されるため、そこから修正していけば良いのです。その際、経営層が認識するリスクと現場が認識するリスクを会社全体で共有して、関係者の目線合わせをしたうえで、しっかり話し合うことが大切です。

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