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リース業界の動向と展望

(2025/08/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■リース業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図

■業界の概要

幅広い業界で利用されるリース、 取扱高は最盛期の約6割の水準

リース業界は、企業や個人が資産を購入する代わりに、一定期間利用することを目的とし、製造、物流・運輸、医療・ヘルスケア、建設、IT・通信、自動車など幅広い業界や業種に対してサービスを提供している。

「製造業」では、機械設備や生産装置のリースが一般的であり、特に、大型の設備を購入する際の初期費用を抑えたい企業に対してリースが利用される。「物流・運輸業」では、トラックやフォークリフトなどの車両・機器のリースが中心で、車両の利用頻度や耐用年数に応じたリース契約が活用されている。「医療機器」では、MRI、CTスキャン、手術用ロボットなどのリースが増加しており、高価な医療機器を導入する際、リースによって初期コストを抑えることができる。「建設業」においては、クレーン、ショベルカーなど建設機械のリースが重要な役割を果たし、プロジェクトごとに必要な機械を柔軟に調達することができるため、資産効率が向上する。「IT・通信業」では、サーバー、ネットワーク機器、PC、プリンターなどのIT関連資産のリースが普及しており、技術の進化が速いためリースを利用して最新機器を導入することが一般的である。「自動車リース」は、個人向けと法人向けの両方で重要なビジネスとなっており、法人向けでは社用車や営業車両の調達として利用されることが多い。

リース契約には保守・管理サービスが含まれることが多く、利用者は資産の維持管理をリース会社に依頼することで、保守管理の簡略化ができる。特に、技術の進化が速いIT機器や医療機器などでは、リース会社の保守により、利用者の負担が軽減される。

国内リース取扱高は最盛期であった1990年代初頭の約6割の低水準にある。背景には2008年4月からのリース会計基準変更によるファイナンス・リースのオンバランス化、低金利による設備購入資金の調達容易化があり、各社は海外展開やリース以外の事業多角化などで収益を確保している。

オペレーティング・リースのオンバランス化、日本会計基準へ適用

リースについては、多様な契約形態があり、「ファイナンス・リース」は契約期間中に資産の利用権を顧客に提供する。契約期間終了後も資産を利用する場合、残価で購入することが可能となる。長期間の契約が一般的で、資産の所有権はリース会社にある。

これに対して「オペレーティング・リース」は、資産の所有権はリース会社が保有し、短期的に使用するためのリースであり、契約期間終了後は資産をリース会社に返却する。使用頻度が高いが、短期間での利用が必要な場合に適している。

このほか「サブスクリプション型リース」は、月額料金で利用できる契約形態で、柔軟性が高く、IT機器や自動車など、使用頻度に応じて契約を変更できるのが特徴である。また、使用量に応じて費用が変動する「従量課金型リース」がある。

リースの主な特徴として、購入に比べて初期費用が低く、資金の流動性を確保できることから資金効率の向上が挙げられる。特に中小企業や新興企業では、リースによる資産導入資金効率が良いため活用されている。また、リース料は経費として計上できるため、税負担を軽減できる税制上のメリットがある。

従来、日本の基準では、オペレーティング・リースは「資産」として計上せず、リース料を毎期の「費用」として計上するオフバランス処理が認められていた。

しかし2019年1月から新リース会計基準(IFRS16)が適用となり、国際会計基準(IFRS)では、原則すべてのリースがオンバランス処理となった。

日本国内では、日本会計基準の企業への適用時期が注目されていたが、企業会計基準委員会(ASBJ)は2024年9月に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(両者を合わせて新リース会計基準)を公表し、2027年4月以降に開始される事業年度の期始めから、上場企業および会社法上の大企業に対して、新リース会計基準が全面適用されることが決定した。借り手企業によっては財務状況やビジネスモデルに影響が大きいため、影響度合いが注目されている。

環境問題やデジタル化・DX推進、新技術や海外市場への対応が課題

リース業界においても、環境問題への対応が重視され、カーボンニュートラルやESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが進んでいる。

企業が環境負荷を軽減しつつ資産利用を最適化するため、再生可能エネルギー機器や電気自動車(EV)のリース需要が増加しており、関連した設備投資や情報通信機器、ソフトウエアのリース需要が、市場をけん引している。こうしたEVや自動運転車両の普及に伴い、既存のリースモデルが見直される可能性が出てくる。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、クラウドベースの管理システムやAIを活用した与信審査、リース契約のオンライン化も進む。

少子高齢化による需要の伸び悩みから国内リース市場の大幅な拡大は見込みにくく、サービスの高付加価値化や、成長分野の取り込みがリース各社の課題となっている。こうした中、アジアやアフリカなどの新興国市場においては、設備や機械を購入する資金が限られていることから、リースの利用が拡大している。持続的な成長のため、リースサービスへの需要が高まる海外市場の開拓が進む。

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