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ガラス業界の動向と展望

(2025/10/31更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■板ガラス、ガラス製品製造業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図

■業界の概要

多様な製品で社会を支える基幹素材産業

ガラス業界は、建築、自動車、家庭用品、電子機器など幅広い分野で不可欠な素材を供給する産業である。

主な製品には、板ガラス、容器ガラス、特殊ガラス、光学ガラス、ガラス繊維(ファイバーグラス)などがあり、住宅やビルの窓、自動車のフロントガラス、飲料容器、スマートフォンのディスプレイ、光通信ケーブルなど、生活と産業の双方を支えている。

日本ではAGC(旧旭硝子)、日本板硝子、セントラル硝子の3社が板ガラス分野を中心に市場を寡占しており、いずれもグローバル市場で高い競争力を持つ。

業績は原材料価格(特にソーダ灰やエネルギーコスト)や為替レート、そして主要需要先である建設・自動車・電子機器・食品業界などの動向に大きく影響される。

供給過剰を生む構造的な課題

板ガラスは、高温で原料を溶かし連続的に生産する「フロート炉」という大型設備で製造される。この炉は一度稼働を始めると停止や再稼働に莫大なコストと時間を要するため、需要が減少しても生産を止めにくい。

また、設備投資が巨額であるため、企業はコスト回収のために操業を維持し、価格を下げてでも販売を継続する傾向がある。そのため、市場環境に応じた柔軟な生産調整が難しく、供給過剰が生じやすいという構造的課題を抱える。

高付加価値化と新市場への展開

国内市場では少子高齢化や住宅着工数の減少により建築用ガラスの需要が伸び悩む一方、原材料・エネルギーコストの上昇やアジア諸国からの低価格品との競争激化が課題となっている。

こうした環境下で、日本メーカーは高付加価値化による差別化を進めている。環境・エネルギー分野では、太陽光発電パネル向け高透過性ガラスや、省エネ性能を高めるLow-Eガラス(特殊金属膜で断熱性を高めたガラス)、真空断熱ガラスなどの需要が拡大している。また、スマートフォンやタブレット端末の普及により、強化ガラスやフレキシブルディスプレイ用ガラスの市場も成長している。

さらに、ガラスはリサイクル性や長寿命性が高く、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する素材としても注目されている。

海外市場では、アジア諸国の都市化やインフラ投資が進む中で、建築用ガラスや特殊ガラスの需要が拡大しており、日本企業の技術力を活かした輸出拡大や医療・バイオ分野への応用も今後の成長が期待される。

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