■業界の概要
■市場の動向と展望
■医薬品製造の業績動向
■医薬品卸売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ
医薬品の新薬開発には10年以上の期間と巨額の投資が必要であり、成功率の低さから「 ハイリスク・ハイリターン型ビジネス」といわれる。製造には高度な品質管理が求められ、生命と健康を支える基幹産業として、高い研究開発費比率と厳格な規制下で運営される点が特徴である。
世界市場は、バイオ医薬品の需要増や新興国における高齢化や慢性疾患増加、医療保険制度の拡充などを背景に、北米・欧州に加えて、アジア太平洋地域が急成長しており、市場拡大が続いている。
がん・希少疾患など治療困難領域の拡大、抗体医薬・遺伝子治療など技術革新の進展に加えて、バイオ医薬品の商業価値の高さや成功確率、アカデミア・ベンチャーとの連携強化により、大手各社は注力領域を低分子薬からバイオ医薬品・先端治療へ拡大している。
近年はモダリティの変化と先端技術の導入により、抗体医薬、核酸医薬、細胞・遺伝子治療が拡大し、製造プロセスの高度化・多様化から「連続生産」や「シングルユース設備」など新技術の採用が進んでいる。AI創薬やAI品質管理などデジタル化が加速しており、生産効率向上や開発期間短縮に寄与している。
バイオ医薬品や再生医療分野での需要急増で、開発製造には高度な技術とGMP(※)に準拠した設備が必要なことから、製薬会社から新薬の「開発(プロセス・治験薬)」と「製造(商業生産)」を包括的に受託する、医薬品開発製造受託(CDMO: Contract Development and Manufacturing Organization)の市場も拡大している。
※GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造管理及び品質管理の基準。日本では、厚生労働省がGMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)として定める。
日本では高額薬の普及による薬剤費増大や医療費抑制策から薬価引き下げが続いている。国は2年に一度の診療報酬改定で行っていた薬価改定について、2021年度からは中間年改定を開始し、実質毎年薬価改定が行われることになった。
特に、国は医療費削減に向けた後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用比率を上げる政策を推進しており、後発医薬品の使用割合について、全ての都道府県で80%以上(数量ベース)とする従来の目標を2029年度末まで継続する。さらに、2024年3月、後発医薬品の使用割合を2029年度末までに金額ベースで65%以上とする新たな目標を公表した。
2024年10月には後発医薬品が出ている先発医薬品(長期収載品)を患者が希望する場合は患者自身が特別の料金を負担する「長期収載品の選定療養」が導入され、後発医薬品への切り替えがいっそう進んでいる。
国内市場では、これまで主力であった低分子薬の収益性が、ジェネリック医薬品の浸透や薬価改定により低下しており、成長が鈍化している。こうした状況下で、製薬会社は構造改革と海外展開を進めている。
政府は薬価制度の抜本改革を推進しており、ドラッグラグ・ドラッグロス解消のための革新的な新薬の導入促進、市場実勢価格のタイムリーな反映による国民負担抑制、さらに医薬品の安定供給確保を両立させる方針を打ち出す。
具体的には、2026年度に向けた「革新的新薬薬価維持制度」への見直し、高額薬剤への対応強化などが検討対象にあがる。これに対して業界団体からは、薬価の毎年改定や「費用対効果評価制度」の拡大、年間販売額が大きい医薬品に対して大幅な薬価引き下げを行う「市場拡大再算定の特例」などは、研究開発投資の減退によるイノベーション低下や、日本市場の魅力低下による患者アクセスの遅れなどを招くとして、反対の声もあがっている。
医薬品卸業界は、医療機関・薬局への安定供給を担う重要な社会インフラとして機能している。かつては地域密着型の中小医薬品卸が全国に点在していたが、業界再編が進んだ結果、全国展開を図る大手4グループに集約され、日本医薬品卸売業連合会の会員数は2002年の175社から、68社(2025年3月31日現在)まで減少した。
近年は、抗がん剤、遺伝子治療薬などの「スペシャリティ医薬品」の流通が増加している。これらの医薬品は高度な温度管理や物流精度が求められるため、大手各社は専用物流網やコールドチェーンの拡充への投資を進めている。
一方で、薬価改定の頻繁化や物流コストの高騰、燃料費・人件費の上昇などが医薬品卸の収益を圧迫しており、低収益体質の改善が各社の課題となっている。
医薬品供給不安への対応も重要テーマであり、ジェネリックメーカーの不祥事による供給ひっ迫を受け、医薬品卸も在庫拡充やサプライチェーン強化を求められており、再編と機能高度化が同時に進む転換期を迎えている。