■業界の概要
■市場の動向と展望
■中古自動車販売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ
中古自動車販売業界は、個人やディーラーから買い取る「買取」、買取業者が仕入れた車を業者間で流通させる場を提供する「オートオークション(AA)」、オークション経由あるいは直接仕入れた車を消費者に販売する「小売り」の3業態で構成される。
近年は、AAを経由せずに買取と販売を一体化した事業者や新車ディーラーが下取りした車を自社流通で販売するケースのほか、中古車の個人間売買の仲介事業に参入するなど、業態を越えた動きもみられる。
中古車は国内の新車販売の動向に大きく左右される。消費者が新車購入時に下取りや売却を行うことで中古車が市場に流入するが、人口減少や若者の車離れ、さらに近年ではメーカーの不正による出荷停止などで新車販売が低迷したことが、中古車の供給に影響を及ぼした。
一方で、日本の中古車は品質や耐久性、ブランド力の高さに加え、厳格な車検制度により海外市場で高く評価されている。特に、アジアやアフリカの新興国で需要が旺盛で、輸出台数は年間150万台を超え、円安時には急増する。企業によっては中古部品の輸出も積極的に展開しており、解体業者や販売会社が海外の補修需要を取り込んでいる。
また、国内では中古車検索サイトが集客に欠かせない存在となっている。「グーネット」や「カーセンサー」が代表的で、販売業者は大規模なIT投資をせず全国から顧客を獲得できる。さらにAI査定やオンライン商談など新サービスも広がっており、消費者の利便性を向上させている。
中古車業界は現在、信頼性と市場環境の両面で大きな課題に直面している。
代表的なのが「メーター巻き戻し」や事故歴の隠蔽といった不正行為であり、旧ビッグモーターの不祥事を契機に業界全体で信頼回復が急務となった。これに対応し、日本自動車公正取引協議会は2023年から車両価格+諸費用の「支払総額」での価格表示を義務化し、違反企業には社名公表や違約金を課すなど、価格の透明化と消費者保護を強化している。
しかし同時に、人口減や若者の車離れ、カーシェアリングやライドシェアの普及など、車を「所有」する意識の希薄化が進み、中古車販売の将来には不安も広がる。
こうした中で、自動車メーカー系列販売店は、中古車を活用した新サービスで競争力を高めようとしている。認定中古車の販売や残価設定ローンによる高品質車の確保に加え、ホンダやトヨタは中古車のサブスクやオンライン契約を展開し、利便性を強化。
さらにエインズトヨタ神奈川は個人間取引の仲介サービス「モビリコ」を開始し、品質保証とアフターサポートで安心感を提供している。今後は、不正撲滅と信頼回復を軸に、デジタル活用や新サービスを通じて「所有から利用へ」と変化する時代に対応する姿勢が業界の成長を左右するといえる。