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TDB景気動向調査(2021年3月)の景気DIは、前月比2.2ポイント増の38.0となり2カ月連続で改善した。3月21日に緊急事態宣言がすべての地域で解除されたなか、人の動きが徐々に活発化したことなどにより上向いた。自宅内消費の拡大傾向が続いたほか、半導体関連や自動車関連などの需要増加はプラスに。他方、燃料価格や原材料価格の上昇は幅広い業種でマイナスとなった。本レポートでは、全国47都道府県を130の圏域に分割し、圏域別の景気DIや圏域別の建設業界の景気DIの動向について捉えた。

※ 企業が実感する地域の景況感により近づけるため、地域の経済的なつながりや交通網などを考慮し全国47都道府県を130の圏域に分割して、圏域別景気DIを算出

※ 圏域別『建設』の景気DIは、回答社数が5社以上得られた圏域を対象に算出した


1.景気DI40以上の圏域が2月より倍増、全体の景況感を下支え

TDB景気動向調査(2021年3月)の景気DIは前月比2.2ポイント増の38.0となり、2カ月連続で改善となった。圏域別 にみると前月から130圏域のうち105圏域で改善(2021年2月102圏域)となり、8割超となった。一方で、23圏域が悪化(同26圏域)した。

また、景気DIを10ポイント区切りでみると、40台は48圏域(同21圏域)、30台は78圏域(同101圏域)、20台は4圏域(同8圏域)となった。景気DIが50以上となる圏域はないものの、40台以上の圏域が前月より倍増し、全体の景況感を下支えした。

圏域別の順位は、熊本県八代市などの「県南・天草」が49.1で最も高く、『製造』や『建設』がけん引役となっていた。以下、高知県南国市などの「高知東部」(48.9)、和歌山県田辺市などの「和歌山南部」(48.3)、埼玉県秩父市などの「秩父」(47.0)、宮崎県都城市などの「都城(みやこのじょう)北諸県(きたもろかた)」(46.2)が40台後半で上位に並んだ(表1)。


2.公共工事や都市の再開発、住宅需要など全国各地で『建設』業界が地域の景況感をけん引

次に業界別の圏域別景気DIをみる。本レポートでは、10業界中最高の『建設』(41.6)の圏域別景気DIを取り上げる。圏域別に『建設』の景気DI をみると、「都城(みやこのじょう)北諸県(きたもろかた)」が55.6でトップとなった。以下、福島県いわき市などの「浜通り」(53.7)、山口県山口市などの「山口・防府」(53.3)、福島県会津若松市などの「会津」(52.8)、長野県飯田市などの「諏訪・上伊那・飯伊(はんい)」、岐阜県可児市などの「中濃・飛騨」、佐賀県佐賀市などの「佐賀南部」(ともに50.0)が50以上を記録した(表2)。加えて、40台後半も20圏域以上となるなど、全国各地で幅広く『建設』が景況感の下支えに寄与していた。

表1
<統計表>2021年3月調査-上位10圏域-.jpg

表2
<統計表>2021年3月調査『建設』-上位10圏域-.jpg

企業からは、「東日本大震災からの復興・創生期間最終年度にあたり、工事が相当数発注されていたので、2021年3月までは忙しい状態が続いている」(土木工事、仙台・仙南)や「2021年2月13日に発生した地震に対応する工事が多くあり、多忙を呈している」(内装工事、中通り)というように、災害復興や復旧に関連する工事についてのコメントが多かった。また、「国土強靭化計画により、補正予算がつき公共工事発注増加によるもの」(舗装工事、宮崎県北・離島)といった声もあげられている。

さらに、「都内の再開発事業は底堅い」(とび工事、区部)や「個人を中心に住宅建設需要が増えている」(木造建築工事、諏訪・上伊那・飯伊)など、都市開発や住宅建設も堅調な様子がうかがえた。


3.まとめ

本レポートでは、2021年3月のTDB景気動向調査を用いて、全国を130圏域に分割して圏域別の景気DIを算出し、特徴を捉えた。

2021年3月の圏域別の景気DIは、8割超の圏域で前月比改善となった。特に、40台以上の圏域が前月より倍増し、全体の景況感を下支えした。特に「県南・天草」「高知東部」「和歌山南部」「秩父」は2月に続き連続で上位5圏域に並んでおり、全国の中でも好調を維持していた。

また、『建設』の景気DIについて圏域別にみると、全国各地の景況感を下支えしており、とりわけ災害復興や復旧などをはじめとする公共工事関連の需要増がけん引していた。加えて、都市の再開発や住宅需要などもプラスに働いていた。

全国的な景況感の改善がみられている。景況感の改善の要因を探るためには地域差に加えてその地域にある業界を深堀する必要がある。本レポートでは『建設』に着目したが、他の業界についても把握し、圏域別の景況感の動向を注視する必要はあろう。

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