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2022年4月から、一般社団法人M&A仲介協会(東京都千代田区)が本格的に活動を開始した。

M&Aは、事業再編だけではなく事業承継問題の解決スキームとしてニーズが高まっており2021年の日本企業が関わったM&Aの件数は4,280件(レコフデータ調べ)と過去最高を記録した。

そのような中、M&Aの売り手企業と買い手企業の間を仲介するM&A仲介事業への新規参入が相次いでいる。成長途上にあるM&A仲介業界において、同協会が発足した理由と役割は何なのであろうか。

― M&A業界にとって転換期となった2021年

中小企業庁が2021年4月に公表した今後5年間の「中小M&A推進計画」では、中小M&A推進のための基盤構築の一環として、①M&A支援機関(ファイナンシャルアドバイザー・仲介業者)登録制度の創設、②M&A仲介に係る自主規制団体の設立、が挙げられている。

①の登録制度は2021年8月に一次公募がスタート、2022年2月に二次公募が行われ、2021年度の登録支援機関数は最終的に2,823件(法人、個人事業主計)にのぼった。顔ぶれはM&A仲介専業や金融機関、経営コンサル系から、税理士などの士業専門家や個人事業者など多岐にわたる。

設立時期をみると、2010年代が1,136件(同40.2%)、2020年代が1,329件(同47.1%)で、この約12年間のうちに参入した支援機関は全体の87.3%を占める。また、M&A支援業務の専従者数では、20人以上の専従者を擁する支援機関は32件とわずか1.1%にとどまり、専従者0~2人が2,000件(同70.8%)と7割を占めている。

登録支援機関だけを見ても、事業者間で規模や業歴の差は大きく、経験値やスキル・知識のばらつきがみられる。資格制度や許認可制度もないため、身一つでできるビジネスとして参入障壁も低く、個人事業者は兼業も多いとみられる。

そのため、M&Aを活用しようとする企業から、サービス内容や料金体系について疑問や不安視する声が上がっているのも事実だ。

― M&A仲介上場5社が自主規制団体設立に参加

こうした中で、M&A仲介協会は、2021年10月に、M&A仲介を専業とする上場5社を理事として発足した。目的として「M&A仲介業の健全な発達を図り、日本経済の発展と維持に寄与する」ことを掲げ、活動内容に5項目を挙げる。

  1. M&A仲介の公正・円滑な取引の促進
  2. 中小M&Aガイドラインを含む適正な取引ルールの徹底
  3. M&A支援人材の育成サポート
  4. M&A仲介に係る苦情相談窓口の運営
  5. その他前各号に附帯関連する事業

設立から半年間の準備期間を経て、2022年4月に、幹事会員としてM&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、日本M&Aセンターの3社、正会員として、オンデック、名南M&A、AGSコンサルティング、レコフなど仲介会員7社、三十三銀行、肥後銀行など金融会員6社の計16社が参加し、本格的に活動を開始した。

同協会の立ち上げから携わり事務局運営を担う岡村英哲氏(M&Aキャピタルパートナーズ執行役員)は、協会の使命として「M&A人材育成と業界全体のモラル向上」を挙げる。「業界全体の課題として、事業規模を問わず事業承継問題に直面している経営者をサポートしきれていないのが実状です。経営者の高齢化が進むなかで、『正しいアドバイス』ができる人材を、業界全体としていかに増やしていくが求められています」(岡村氏)。

協会は、活動として「中小M&Aガイドライン」に関する啓蒙・遵守のほか、M&Aエキスパート認定制度の推奨や、スキルアップのための研修コンテンツやレポートの提供などに取り組む。

4月1日からは、コンテンツの第一弾として協会ホームページで中小企業庁財務課課長補佐の高橋正樹氏による「中小M&Aガイドライン」の動画解説の提供を開始した。事業承継問題におけるM&Aの重要性や中小企業庁を中心とした政策面でのこれまでの取り組み、そして今後の取り組みが解説されており、仲介業者だけではなく、事業承継においてM&Aを活用しようと考える経営者にとっても参考にできる内容となっている。

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※M&A仲介協会ホームページより

― 人材育成、情報発信を通じて業界活性化へ

「理事会5社だけでM&Aアドバイザーが約800名おり、これだけのアドバイザーを育成してきたノウハウを活用し、教育コンテンツの拡充による人材育成が、協会活動の肝と考えています。会員対象のコンテンツはもちろん、会員外の一般の方にも参考にしていだける動画やドキュメント提供、セミナー等の活動を展開する予定です。」(岡村氏)。

また、協会への参加を通じて会員のネットワークを構築し、最新の業界動向を発信し、業界全体を活性化するためのコミュニティとなることを目指す。

スキルやモラルの乏しさからトラブルが発生すると、業界にとって大きなダメ―ジとなり成長の阻害要因となりうる。そのため、苦情相談窓口を設けて、会員企業に対する相談を受け付け、公共性の観点から課題を是正していく方針だ。企業としての立場や哲学は違えども、M&A仲介業界を活性化し日本経済の成長につなげていきたいという、会員各社の思いは共通している。

経営者にとっては、大切に育ててきた会社の将来を誰に相談するかという場面では、「安心」が大きなポイントとなる。「プレーヤーが増えている」「業界としての注目が高まっている」「売り手・買い手が増えている」という成長期にあってM&Aに関する情報があふれる中では、安心感を与えられるブランド力も重要だ。協会活動を通じて、経営者が安心して相談できる環境づくりはもちろん、業界の成長ともに会員企業のブランド化へ寄与するかが注目される。



一般社団法人M&A仲介協会
東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館20階
https://www.ma-chukai.or.jp/

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