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紙・パルプ業界の動向と展望

(2026/03/31更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■洋紙、板紙製造業の業績動向
■洋紙代理店、紙卸商の業績動向
■段ボール製造業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図

■業界の概要

寡占化が進む装置産業

紙・パルプ業界は、木材パルプおよび古紙を原料として、新聞用紙、印刷・情報用紙、段ボール原紙、クラフト紙、衛生用紙、工業用紙などを生産・供給する産業である。紙・板紙を生活必需品として安定供給するほか、他産業の生産・物流・情報流通を基盤的に支える役割を担う。原料構成としては古紙比率が約7割、木材パルプが約3割とされ、高度なリサイクルシステムを有する。

抄紙機やボイラーなどの大型設備を必要とする典型的な「装置産業」であり、参入障壁は極めて高い。一方で固定費負担が重く、需要が減少した場合には過剰設備の負担が利益を圧迫する特性を持つ。また、製品の差別化が難しいため、価格競争に陥りやすい。

近年は、情報のデジタル化・ペーパーレス化や人口減少により、印刷・情報用紙や新聞用紙の需要が減少傾向にある。そのため設備過剰と収益性悪化が課題となっており、生産設備の停止や工場の統廃合、M&Aによる業界再編が進展。国内市場は寡占化が進んでいる。

原材料価格、エネルギーコスト、為替レートが収益を左右

主原料である木材チップの多くを海外からの輸入に頼っているため、円安は調達コスト増加に直結する。また、もう一つの重要な原料である古紙の価格も、海外需要の変動などにより乱高下しやすい。さらに、巨大な機械を稼働させ、乾燥工程などで大量の熱と電力を消費するエネルギー多消費型産業であるため、石炭やLNG、電力料金の高騰が収益に大きな影響を及ぼす。

企業はコストアップ分を製品価格へ転嫁することで利益水準の維持を図るが、需要家との交渉には時間を要することから、コスト上昇と価格転嫁のタイムラグも収益悪化要因となる。

近年では、需要が減退する洋紙部門のマイナスを、eコマース拡大で伸びる段ボール原紙や、海外事業、さらには自社発電設備を活用した売電事業(再生可能エネルギー事業)などの多角化収益で補う構造へとシフトしている。

求められる環境対応と新市場への期待

エネルギー多消費産業である紙・パルプ業界は、脱炭素化への対応を強く求められている。従来の石炭ボイラーからバイオマス燃料やLNGへの燃料転換など、CO2排出量の削減に向けた環境投資が不可避となっている。物流面においては、重量物である紙製品の長距離輸送を担うトラックドライバーの不足や輸送コストの急騰に対し、サプライチェーンの見直しが迫られている。

一方で、世界的な環境意識の高まりによる「脱プラスチック」の動きは、紙・パルプ業界にとって追い風となり得る。プラスチック製のストローやカトラリー、食品包材などを紙製品へ代替する動きが急速に進んでおり、新たな市場が創出されている。

紙は再生産可能な持続可能素材であり、すでに高度な古紙リサイクルシステムが構築されている。また、木材パルプをナノレベルまで解きほぐした最先端のバイオマス素材「セルロースナノファイバー(CNF)」といった新素材の実用化も期待される。

さらに、製紙プロセスで培った技術を応用し、木質バイオマス等を原料とする持続可能な航空燃料(SAF)の商業生産に向けた取り組みも進展している。

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