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2019年4月1日より働き方改革関連法および改正出入国管理法が施行され、多様な人材の確保・活躍推進、生産性向上に向けた取り組みが注目されているなか、深刻な人手不足が続く中小企業では、魅力ある職場づくりが人手不足解消につながることから、働き方改革への取り組みが不可欠な状況にある。

中小企業・小規模事業者の経営支援ならびに人材確保に関する政策の企画・立案に取り組んでいる経済産業省中小企業庁 経営支援課課長補佐の森本 要氏に中小企業における働き方改革の現状と課題、ならびに支援策などについて話を聞いた。

○森本様_トリミング.JPG


中小企業の働き方改革の取り組み状況について、どのようにとらえていますか

2020年4月から中小企業においても「時間外労働の上限規制」が開始されることから、制度の周知と支援策の浸透が必要と考えています。

日本商工会議所と東京商工会議所は19年6月に中小企業を対象とした「人手不足等への対応に関する調査」(調査期間:19年3月25日~4月25日)を公表しています。働き方改革関連法の認知度として、「知っている」と回答した企業の割合は、「時間外労働の上限規制」が前回(調査期間:18年10月22日~12月3日)の60.4%から79.5%に拡大、「年次有給休暇の取得義務化」は前回の75.4%から89.9%となっているなど、中小企業の認知度は徐々に高まっているといえます。現時点(9月下旬)では調査時点よりもさらに認知度は進展していると考えられます。

また、「時間外労働の上限規制」への準備状況について「対応済・対応の目途が付いている」と回答した企業の割合は、前回の45.9% から上昇し、63.1%となっています。

働き方改革に取り組むうえでの問題や課題、支援策についてお聞かせください

大企業では19年度から働き方改革関連法案の制度変更がスタートしていますが、大企業の長時間労働の削減などの取り組みにより、中小企業に対して適正なコスト負担をともなわない短納期発注や人員派遣の要請など「しわ寄せ」問題が懸念されます。

大企業の働き方改革の「しわ寄せ」が中小企業の働き方改革の妨げとならないことが重要となります。中小企業庁、厚生労働省、公正取引委員会は、「しわ寄せ」防止のための総合対策を策定し、工程表に基づき、3省庁で連携を図りながら、「しわ寄せ」防止に向けた取組を強力に推進しています。総合対策では、事業者が遵守すべき関係法令の周知徹底を図るほか、各省庁から所管業界団体への指導、周知啓発などの働きかけを実施しています。

また、働き方改革をきっかけに、自社の課題を解決されていくことを支援するため、生産性向上や人材確保のための支援策を用意しています。例えば、革新的なサービス開発や生産プロセスの改善等に必要な設備投資等を支援する「ものづくり・商業・サービス補助金」や生産性向上に資するIT ツールの導入を支援する「IT 導入補助金」などにより生産性向上や業務効率化に向けた取組を支援しています。また、厚生労働省においても、魅力ある職場づくりや社員の育成を支援する助成金等を用意しています。

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