社会全体のデジタル化が国を挙げて進められ、足元ではインボイス制度の導入も控える中、経営へのデジタル導入は、企業にとって経営課題解決のさらなる有効な手段となりつつある。企業によって取り組み姿勢に差が見られる中、国は中小企業のDX・デジタル化を促進すべく、支援を強化している。中小企業庁 経営支援部 経営支援課の村山香氏に話を聞いた。
2022年版の中小企業白書では、デジタル化の進捗度合いを4段階に整理しました。その第2段階がいわゆる「デジタイゼーション」、第3段階が「デジタライゼーション」、第4段階が「DX」に相当するイメージです(図表1)。
コロナ禍により、リモートワークや非接触販売の必要性が高まり、多くの企業が業務のデジタル化に取り組み始めた結果、第3、第4段階に取り組む企業が増えました。
これらの「デジタル化が進んでいる企業」ほど、事業戦略におけるデジタル化の優先順位が高く、今後もIT投資を継続していく意向が強く見られます。
一方で、中小企業においては、第1、第2段階の企業が相当数存在します。そして、まだデジタル化に取り組めていない第1段階の企業においては、今後も「IT 投資は実施しない予定」という企業が6割を占めている状況です(図表2)。
中小企業の中でも、デジタル化への取り組み状況は二極化しています。
DX・デジタル化における二極化傾向は、生産性や業績においても顕著に見られます。
2015年と2021年の労働生産性および売上高を比較すると、コロナ禍の影響もあり第1、第2段階の企業はいずれも低下・減少してしまっています。対照的に、第3、第4段階の企業は、それらが向上・増加しています(図表3)。
さらには、第3段階と第4段階の企業の間にも顕著な差があり、企業の事業戦略を踏まえたDX によるさらなるプラス効果が見て取れます。
こうした調査結果から、事業戦略や経営課題等を踏まえたDX・デジタル化が、結果として生産性向上につながると考えています。
中小企業がDX・デジタル化に消極的な理由としては、次のようなものが挙げられます。
これらに対して中小企業庁で行っている支援のうち、代表的なものについてご説明します。
「具体的に何から手を付けたらよいのかわからない」、「そもそも何をデジタル化したらよいのかわからない」という企業の気づきを喚起し、行動のきっかけを掴んでもらうためのツールとして、2022年7月にデジタル化診断「みらデジ」のポータルサイトを立ち上げました。
ここでは、次の3つのコンテンツを提供しています。
パソコンやスマートフォンで、自社の経営課題やデジタル化の進捗度を、無料でチェックできるツールです。
簡単な設問に答えると、中小企業約5,000社へのサーベイから得られたデータとの比較結果が表示され、同業他社や同じ地域の企業と比べて自社のデジタル化がどの程度進んで/遅れているのかを把握することができます。
自社の現状と課題が見える化され、DX・デジタル化に取り組む一つのきっかけになると考えています。
また地域金融機関、士業など中小企業と接点のある方々に、支援のために中小企業にアプローチする際のツールとしても使っていただけます。
①の「みらデジ経営チェック」の結果をもとに、オンラインで専門家に無料相談ができるサービスです。
中小企業診断士やIT コーディネーターといった専門家が、企業の課題を整理し、解決への道筋をアドバイスします。
また、企業だけでなく、それを支援するIT企業や金融機関、士業からの相談にも対応しています。
DX・デジタル化の事例紹介やデジタル用語・デジタルツールの解説、専門家によるコラム、補助金の紹介など、企業がDX・デジタル化を推進する上での様々な情報を、Webサイトに掲載しています。