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2023年5月、日本政府が掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)推進に向けて、ふたつの重要な関連法が成立した。カーボンプライシングやGX 経済移行債を含む「GX 推進法」と、再生可能エネルギーの導入促進や、原発の活用などを規定する「GX 脱炭素電源法」である。いずれも今後の日本の産業構造や将来の経済成長に関わる法律として、大きな注目を集めている。

環境分野における中小企業政策を担当する、経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 企画官の内野泰明氏に、GX 推進法の背景やカーボンニュートラル実現に向けた政策について聞いた。

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経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 企画官 内野 泰明 氏


- GX 推進法について、成立までの背景をお聞かせください

世界的なトレンドとして、各国・各地域でカーボンニュートラルに向けた大規模投資が加速しています。国際的な競争力を維持向上させるためには、国・金融・産業界のそれぞれで、気候変動対策に対する総合的な戦略が必要です。

日本のエネルギー政策において、「エネルギーの安定供給・確保」は重要なテーマとして位置づけられてきましたが、日本のエネルギー自給率は11%(2020年)と低いままです。ここにきてウクライナ情勢もあり、化石燃料を海外に依存しているリスクが顕在化していることから、エネルギー需給の構造改革を加速させる必要があります。そのため2023年2月の「GX 実現に向けた基本方針」閣議決定に続き、推進するための法律としてGX 推進法が制定されました。
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- GX 推進法ではGX 経済移行債とカーボンプライシングが注目されています

GX に向けた先行投資として20兆円規模のGX 経済移行債を活用し、カーボンプライシングを組み入れて、GX を前倒し推進していくことを目的としています。

GX 経済移行債は、償還財源としてカーボンプライシングを充て、2050年までに償還させる仕組みです。この政府による20兆円の投資に民間投資を加え、官民合わせて10年間で150兆円の投資により、GX 実現を後押しします。


- カーボンプライシングの概要をお聞かせください

カーボンプライシングのポイントは3点あげられます。①多排出産業を中心とした排出量取引制度の2026年度からの本格的な稼働、②発電事業者に対する有償オークションの2033年度からの段階的導入、③炭素賦課金の2028年度からの導入です。

1つ目の「多排出産業における排出量取引制度」は、2023年度からは第一フェーズの「試行」段階として「GX リーグ」という組織で自主参加型でスタートします。現在、日本全体のCO2排出量の4割以上を占める企業が参画しています。排出量取引制度の本格稼働は2026年度からですが、以降も企業の参加率向上に向けた政策や、政府指針をふまえた設定目標を民間の第三者が認証する仕組みなど、規律や実行性を高める政策を進める予定です。

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