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1.景気は3カ月連続で改善

企業の景況感について、2022年5月のTDB景気動向指数(景気DI)は前月比0.4ポイント増の41.2となり、3カ月連続で改善した(図表1)。

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5月の国内景気は、3月にまん延防止等重点措置が解除されたことや、大型連休やその後も継続した人出の増加などがプラス材料となった。「大型連休の移動も多く活況を呈した」(そば・うどん店)など来客数の増加がみられる業種もあり、厳しいながらも旅行業や旅客運送などを含む個人消費関連の景況感が押し上げられた。

一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や、主要国における金利上昇などにともなう円安や原材料高により輸入物価が1980年の第二次オイルショック以来となる歴史的上昇、中国でのロックダウンや部品調達の困難化、半導体不足などで工場の稼働が停止するなど、マイナス要因にも多く直面した。また、仕入単価DI と販売単価DI は過去最高を更新し、取引価格や販売価格への転嫁が一部でみられた。

業種別では、自動車工場の減産や稼働停止などが響いた『製造』は悪化したものの、『小売』『サービス』など9業界が改善した。

特に『小売』は、「新型コロナウイルス下ではあるが、客数が戻りつつある。大型連休中もそこそこの売り上げがあった」(菓子小売)など「飲食料品小売」が大きく改善(図表2)。また「燃料油価格激変緩和補助金で思ったより粗利が取れている」(ガソリンスタンド)ことなどを背景に、「専門商品小売」も政府による物価高対策が奏功した。他方で、「新型コロナウイルス下の巣ごもり需要が終わり、その反動がある」(家具小売)といった声もあり「家具類小売」が大幅に悪化した。これらプラス・マイナスの要因が生じつつも、『小売』の景況感は3カ月連続の改善となった。

図表2.jpeg

国内景気は、海外情勢の影響を受けた工場の稼働停止などもみられたが、個人消費関連の持ち直しが続き、3カ月連続で上向いた。


2.2022年度、個人消費や設備投資を中心にプラス成長を維持

TDB マクロ経済予測モデルで求めた日本経済見通しによると、2022年度の実質GDP 成長率は前年度比+2.0%、名目GDP 成長率は同+2.6%になると予測される(図表3、図表4)。

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図表4.jpeg

2022年度は、ロシア・ウクライナ情勢の行方や円安の進行、原油・原材料価格の高止まりなど、不透明な外部環境の動向が懸念材料となってくるとみられる。とくに、輸入物価の上昇は、企業の収益力や家計の実質購買力の低下をもたらす要因となりうる。

他方で、新型コロナウイルスの感染状況に落ち着きがみられるなかで、外出機会の増大にともなう対面型サービスの需要拡大のほか、インバウンド消費需要も期待される。また、半導体需要の増加や挽回生産、値上げへの意識の変化などはプラス材料となろう。

こうした状況のなかで、日本経済は、自宅内消費の継続や5G(第5世代移動通信システム)関連の環境整備や半導体需要の拡大を含め、個人消費や設備投資など国内民需がけん引し2年連続のプラス成長で推移すると予測される。

GDP の5割超を占める個人消費関連では、感染状況の落ち着きが見込まれるほか、消費者心理の改善とともに経済対策の効果が期待される。そのため、個人消費は再び増加へと転じ、7~9月期には消費税率引き上げで落ち込んだ2019年10~12月期はもとより、2020年1~3月期の水準を上回ると予測される。年間を通じてみると、個人消費は同+2.8%と2年連続でプラスの伸びになると予測される。

設備投資は、原油価格の高騰にともなう燃料価格の高止まりや、急速な円安の進行に加え、中国における新型コロナウイルスの感染拡大にともなうロックダウンで部品調達等に影響が表れた。しかし、5G など通信環境のインフラ整備やAI など情報化投資、研究開発投資、省力化・自動化需要の拡大のほか、E コマースの拡大を背景とした物流施設などの建設投資、脱炭素に向けた環境対応投資などが下支えし、年間では同+3.9%で増加すると見込まれる。

総じて、2022年度の日本経済は、個人消費や設備投資など国内民需を中心に成長していくとみられる。しかし、新型コロナウイルスの感染状況による消費者マインドの後退やウクライナ情勢の緊迫化など、下振れリスクも依然として大きいことには注意が必要である。

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