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「ドライバー不足」と「燃料費高騰」が経営圧迫

■深刻な人手不足に対する取り組み進むも、さらなる倒産増加の可能性

2024年4月からの時間外労働の上限規制開始まで半年を切った。政府は「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定し、「2024年問題」に対し運送業者だけではなく荷主も一体となった対応を掲げた。民間でも、荷主共同の物流システムの運用が検討されるなど、懸念される深刻なドライバー不足への対応を進めている。

物流合理化の動きが期待されるなか、道路貨物運送業者を取り巻く環境は依然として厳しい。帝国データバンクが2023年7月に実施した調査では、「運輸・倉庫業」はコストが100円の上昇したのに対して26.2円しか請負価格に反映できていないことがわかった。

賃上げへの理解が進みつつあるが、「燃料高騰分や人件費上昇分の転嫁が進まない」中小規模の運送企業が、今後さらなるコストアップや厳しい価格競争に耐えきれず、倒産に至るケースが増加しかねない。

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■「道路貨物運送」倒産は9年ぶりの高水準、要因は「ドライバー不足」と「燃料費高騰」

人手不足が本格化し、輸送能力の大幅な低下が顕在化するといわれる「2024年問題」まで半年を切るなか、道路貨物運送業者の倒産が相次いでいる。トラック運送や軽自動車で宅配をおこなう道路貨物運送業者の倒産は2023年1-9月に220件発生し、前年同期(169件)を大幅に上回った。

9月時点で200件を超えるのは、軽油価格が大幅に上昇した2014年(212件)以来9年ぶり。このペースで推移した場合、年間の倒産件数はリーマン・ショック時以来14年ぶりに300件を超える可能性がある。

こうした倒産増加の主な要因は、「ドライバー不足」と「燃料費高騰」が挙げられる。2023年の『人手不足倒産』(1-9月:177件)を業種別に細かくみると、道路貨物運送は全業種で最も多い28件だった。新たなドライバーを獲得できずに経営が悪化したケースのほか、自社ドライバーの離職・退職による倒産も目立つ。

また、2023年の『物価高倒産』(1-9月:553件)でみても、道路貨物運送は82件と、『人手不足倒産』同様に業種別で最も多かった。このうち77件が燃料費や光熱費など「エネルギーコスト」に起因する倒産であり、軽油価格が2008年以来15年ぶりの160円台(9月時点)に達するなど、業務上避けられないエネルギーコストの増加が収益性を悪化させたケースが多くみられた。

道路貨物運送業者は、コロナ禍前から高齢化などによるドライバー不足の問題が顕在していたものの、コロナ禍での経済抑制により一時的に落ち着きを見せつつあった。

しかし、ポストコロナで経済活動が活発化するにつれ、再び噴出したドライバー不足により受注に対応できなくなり運送エリアや輸送量の縮小を余儀なくされるなか、燃料価格の高騰が企業経営に追い打ちをかける形で、事業継続を断念せざるを得ないケースが今年に入り頻発している。

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