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食のインフラどう守る。「安くて当然」から脱却必須

給食事業者の倒産が目立ってきた。2023年に発生した、学校給食や企業向け給食、学生・社員食堂の運営受託などを含む「給食」事業者の倒産は10月までに17件発生した。

9月に給食運営のホーユー(広島)が事業を停止し、全国各地で給食がストップするなど波紋が広がった。1-10月の累計としては2年連続で増加し、過去5年で最多ペースとなった。

昨年以降、月2000品目を超える食品値上げに加え、調理スタッフなど人件費や光熱費などあらゆる運営コストが高騰し、小中学校を含む給食現場の経営を直撃した。2022年度の最終利益が判明した給食事業者374社のうち6割超が赤字や減益となったほか、1割超の企業では3年連続で赤字となるなど厳しい経営環境が露呈した。

また、回答が得られた20社の給食事業者のうち15%が、光熱費などのコスト上昇分を「全く価格転嫁できていない」と回答した。

学校給食は最安値で入札した業者と契約する一般入札の採用が多く、低価格競争が常態化している。そのため、人件費や食材費を事前に高く見積もることが難しく、契約上の問題や保護者の抵抗から値上げも難しい。

中学校でも給食負担が1食200円前後と「安い給食」を維持するあまり、急激な物価高で市場からの退出を余儀なくされる中小給食事業者が増えている。

足元では、価格以外の面も考慮して給食業者を選定するプロポーザル方式の入札制度を検討する動きや、補助金投入でコスト高分を補填する自治体も出てきた。

一度ストップしてしまえば、子供たちのみならず社会に広く影響が出る食のインフラ維持のために、「安くて当然」の低価格競争から、利益が出せる弾力的な価格の設定といった制度改革が必要となっている。

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