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本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢を取り上げる。第31回はタイを紹介する。タイは景気低迷が続いており、「アジアの病人」とまで評される状況にある。一方、2026年2月の下院総選挙で躍進した「タイ誇り党」を中心とする新政権の発足により、政治の安定化や経済政策への期待が強まっていた。もっとも、足元では中東情勢の悪化という新たな景気下振れリスクが浮上し、新政権は難しい経済運営を迫られている。以下では、タイ経済の現状や新政権の特徴を掘り下げたうえで、中東情勢長期化のリスクについて点検する。


目次

■低成長が常態化
■高水準の家計債務を背景に、消費は力強さを欠く動き
■財輸出は底堅い動きも、観光業は不調
■下院総選挙を受け、一時は景気持ち直し期待が高まる
■エネルギー価格上昇や供給途絶による影響は深刻


■低成長が常態化

タイ経済は低迷が続いている。2025年の実質GDP成長率は前年比+2.4%と、前年(+2.9%)から減速した。ASEAN主要国のなかで最も低い伸びとなるのは5年連続である。コロナ禍以降、タイ経済は域内他国に比べて回復力の弱い状態が常態化しており、「アジアの病人」とまで評されている。

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背景にあるのは、まず供給面の制約である。タイでは生産年齢人口(15~64歳)が2017年をピークに減少し続けており、労働供給の拡大を通じた成長が見込みにくくなっている。足元の少子化も深刻であり、2025年の合計特殊出生率は0.86人と、人口置換水準(2.1人程度)だけでなく、日本の水準(2024年:1.15人)すら下回っている。このため、今後も人口減少に歯止めがかからない公算が大きい。

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