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本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢を取り上げる。第27回はロシアを紹介する。ロシアでは、プーチン大統領が2024年の大統領選で再選され、2030年までの続投が事実上決定している。3年半に及ぶウクライナ戦争は、一時的に経済を押し上げたが、戦争の継続はロシアの潜在成長力を徐々に蝕んでいる。以下では、ロシア内政の特徴を振り返り、ウクライナ侵攻以降の経済の動向や今後の停戦の行方を展望する。


目次

■盤石な国内基盤と経験豊富な実務家がプーチン体制を支える
■東方シフトで原油輸出は継続、一方、輸入代替は不完全な側面も
■制裁下での経済の成長の裏側
■戦争景気は息切れ、戦争の代償の蓄積から低成長に向かう
■国内の反戦ムードは高まらず、プーチン政権は交渉の長期化を狙うか


■盤石な国内基盤と経験豊富な実務家がプーチン体制を支える

プーチン大統領は2000年の就任以来、メドベージェフ政権期を挟みつつも実権を保持し続けている。憲法改正により任期延長を可能とした2024年選挙では、実質的な信任投票となる中、87%という高い得票率を得て再選した。プーチン大統領は、80%を超える高い支持を維持しており、特にソ連時代を経験した高齢者層、ウクライナ侵攻を支持する退役軍人や保守的なロシア正教徒などが岩盤支持層として存在する。議会における与党「統一ロシア」の支配も盤石である。反体制的な団体への監視や情報統制が一段と強化される中で、選挙での政権交代の可能性は事実上ほぼ排除されている。

長期政権を支えてきたのが、経験豊富な側近や優秀な実務家たちである。外交では、2004年以来外相を務めるラブロフは重鎮としての存在感を保ち、欧米諸国からの外交的な圧力に対抗しつつ、中国やインド、グローバルサウスとの関係を深め、国際舞台での孤立を回避した。

財政では、シルアノフ財務相が戦費拡大の圧力のなかでも、大企業や高所得層への増税や、石油ガス収入を積み立てた国家福祉基金(NWF)を機動的に用いることで、国民の反発を抑えつつ、財源を捻出している。金融では、ナビウリナ中銀総裁が、資本流出阻止のための資本規制の導入や輸出企業の外貨収入の強制売却措置等で通貨を安定させ、金融市場の崩壊を防いだ。

産業面では、マントゥロフ産業商務相(のち副首相、2024年5月に第一副首相)を中心に輸入代替を主導し、経済制裁や外資撤退で寸断したサプライチェーンの再編を進めた。また、経済学者出身のベラウソフ第一副首相(2024年5月に国防相へ)も供給サイドの調整役として、軍需調達のための資源の優先配分や投資誘導の枠組みを整えた。

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