本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢を取り上げる。第29回はトルコを紹介する。トルコは、2025年3月に反政府抗議活動が発生し、金融市場にも動揺が広がった。実体経済は、インフレ抑制がなお途上にある一方、高成長を維持して底堅さを見せる。外交的には、巧妙な立ち回りで存在感を高め、周辺国との関係改善も進み、安全保障面のリスクは相対的に後退しつつある。他方、2028年大統領選に向けて先行きの不透明感が高まっており、今後の動向が注目される。
2025年3月、野党・共和人民党(CHP)のイマムオール・イスタンブール市長が汚職容疑で逮捕・収監され、これを契機に反エルドアン政権の抗議活動が大都市部を中心に拡大した。2028年大統領選の有力候補と目されていた人物の身柄拘束は、政権による政治的意図に基づく措置だとの見方を強め、抗議の広がりを後押しした。