コロナ前水準に回復。インバウンド増で恩恵、宿泊代値上げも寄与
観光庁によれば、2024年4月に国内のホテルや旅館に泊まった日本人・外国人の総数は前年同月比10.1%増の延べ約5190万人泊だった。なかでも、外国人は同46.9%増・約1450万人泊に上り、訪日客の急増ぶりが目立った。また、客室稼働率も全体で59.8%と、コロナ前に迫る高い水準で推移した。
1ドル150円を超える円安で割安感のある日本旅行が人気となっていることを追い風に、国内の旅館・ホテル市場は今後も好調を維持するとみられ、24年度の市場は5年ぶりに5兆円台に到達し、過去最高を更新する可能性もある。
他方、宿泊現場ではフロントや調理スタッフなどの確保が間に合っていないなど、依然として深刻な人手不足状態が続いており、宿泊予約や客室稼働率に制限を設けて運営するなど、旺盛な需要を十分に取り込むことが難しいケースもみられる。
帝国データバンクの調査では、旅館・ホテル業界の人手不足割合は、正規・非正規人材ともに6割を超える水準で推移した。外国人材の登用や受付の自動化で省人化投資が必要な一方、こうした対策が難しい事業者もあり、人手不足への対応が24年度における旅館・ホテル市場の成否を分けるポイントになる。
旅館・ホテル市場がコロナ前水準に回復してきた。5月時点までの各社業績推移・業績予想に基づいた2023年度通期の旅館・ホテル市場(事業者売上高ベース)は4.9兆円前後となる見込みとなった。ただ、年始の旅行需要に加え、24年3月にかけての卒業旅行シーズンなど、前年に比べて国内旅行需要がさらに高まることを見込んだものの、過去最高水準となる5兆円には届かなかった。
今年1月に発生した能登半島地震の影響で、北陸地方を中心に営業停止などの措置を余儀なくされたことが下押し材料の一部となった。ただ、4兆円だった22年度からは1.2倍規模で推移するとみられるほか、訪日外国人による宿泊需要が旺盛だった19年度並み水準での着地となる。
過去1年間に帝国データバンクが調査した全国の旅館・ホテル業者のうち、直近の業況が判明した931社を集計した結果、52.6%の企業が「増収」基調であることが分かった。ただ、「増収」の割合は1年前の23年4月(60.8%)に比べると低下し、代わって「前年度並み(横ばい)」(44.5%)が増加した。「減収」割合は2.9%と、1年前(2.6%)に比べほぼ横ばいで推移したほか、コロナ禍中の21年4月(75.7%)から大幅に減少した。
2023年5月から新型コロナの5類移行などで国内観光需要が回復に転じたほか、インバウンド(訪日外国人客)需要も急回復したことで大幅な増収を見込む企業もみられた。また、需要急増に合わせて客室単価の見直しや価格引き上げに成功したケースも多く、都市部のビジネスホテル業態などを中心に前年度比20%超の大幅な増収を見込む企業も目立った。ただ、「増収」の割合は1年前に比べると減少しており、旅館・ホテル市場はコロナ禍後に発生した需要の急回復局面から、安定した需要の獲得・定着のフェーズへと移行しつつある。
都道府県別にみると、「増収」基調となったホテル・旅館の割合が最も高かったのは「広島県」で、84.0%の企業が増収基調と回答した。「和歌山県」「沖縄県」でも8割超の企業で増収となったほか、特にアジアからのビジネス客・訪日客の存在感が目立つ「福岡県」、草津温泉など関東有数の温泉コンテンツを有する「群馬県」では、「増収」企業が7割を超えた。
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