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【目次】

■TDB景気動向指数の動向
■TDBマクロ経済モデルに基づく日本経済見通し
■景気トピックス


■TDB景気動向指数の動向

景気は2カ月連続で改善

企業の景況感について、2026年6月のTDB景気動向指数(景気DI)は前月比で1.0ポイント増の42.6となり、2カ月連続で改善した(図表1)

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6月の国内経済活動は、AI関連でデジタル化・省力化需要が広がったほか、高水準の賃上げやエアコンなどの季節需要も下支え要因となった。また日経平均株価が7万円を超えて最高値を更新するなど、堅調な金融市場も好材料だった。さらに米国とイランの停戦合意による先行き不透明感の緩和もプラス要因だった。

一方で、日銀の利上げや原油・エネルギー価格の上昇、仕入単価の高止まりは悪材料だった。

『金融』分野は5カ月ぶりに改善が見られた。政策金利の引き上げを背景に、貸出金利回りの改善や利息収入の増加を指摘する声が聞かれ、銀行などの景況感が上向いた。また、月後半に日経平均株価が7万円台となるなど、株式市場の堅調な推移も押し上げ要因となった。加えて、キャッシュレス化の推進政策も好材料となった。

『製造』分野では2カ月連続で改善した。半導体関連やデータセンター向けの受注が堅調な「電気機械製造」や「機械製造」は、いずれも2カ月連続で改善した。一部自動車メーカーからの安定受注や、造船関連の仕事量が増加といった声が聞かれる「輸送用機械・器具製造」も2カ月連続で上向いた。

他方、原材料価格の上昇や包装資材などの厳しい調達環境に加え、価格転嫁の遅れが響く「飲食料品・飼料製造」は4カ月連続で悪化した。

総じて、国内景気は最高値を更新した株価をけん引する半導体やAI関連、設備投資意欲の改善などがプラス材料となり、改善が続いた


■TDBマクロ経済モデルに基づく日本経済見通し

2026年度の日本経済は3年連続のプラス成長と予測

TDBマクロ経済予測モデルで求めた日本経済見通しによると、2026年度の名目GDP成長率は前年度比+2.8%、実質GDP成長率は同+0.7%となり、日本経済は小幅ながら3年連続でプラス成長を維持すると予測される(図表2)

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2026年1~3月期の実質GDPがプラス成長となったことに続き、4~6月期以降も賃金上昇や省力化・AI関連投資などが内需を下支えするとみられる。ただし、エネルギー価格の上昇や円安にともなうコスト増が、成長率を下押しするリスクは強まっている。 "

2026年度は、危機管理投資や成長分野への官民投資、AI・デジタル化、省力化に向けた設備投資が景気を下支えするとみられる。人手不足が構造的な課題となるなか、ソフトウェア、半導体、データセンター、業務自動化などへの投資需要は底堅く推移しよう。また、賃上げの継続や夏季賞与の増加は家計所得を押し上げ、個人消費の回復に寄与すると期待される。

他方、複数の下振れリスクも抱えている。日本銀行による政策金利の引き上げと長期金利の上昇は、住宅ローン負担を増加させるほか、企業の資金調達コストを通じて住宅投資や設備投資を抑制する可能性がある。米国の通商政策をめぐる不透明感に加え、中東情勢の不安定化による原油・LNG価格の上昇も、輸入物価や企業収益の重荷となる。金融環境の正常化が進む一方で、金利上昇に対する家計や中小企業の耐久力には注意が必要である。

個人消費部門では、名目賃金の上昇が引き続きプラス材料となる。上場企業の2025年度の平均年間給与は692.6万円となり、前年度から21.5万円、率にして3.2%増加し、5年連続で過去最高を更新した【1】。平均年間給与が増加した企業も全体の76.8%に達しており、人手不足への対応や初任給の引き上げが既存社員の給与水準にも波及している。2026年度も人材確保を目的とした賃上げが続くことで、家計所得の増加が個人消費を下支えするとみられる。

もっとも、賃上げの効果は企業規模や業種によって一様ではない。成長分野や高収益企業では賃上げ余力が確保されている一方、原材料高を十分に価格転嫁できない中小企業では、防衛的な賃上げが収益を圧迫している。また、平均給与の上昇が上場企業を中心とした動きにとどまる場合、家計全体の実質購買力の改善は限定的となる可能性がある。物価上昇率を上回る賃金上昇が幅広い企業や雇用者に波及するかどうかが、今後の個人消費を左右しよう。

【1】帝国データバンク「上場企業の「平均年間給与」動向調査(2025年度決算)」(2026年7月9日発表)

消費者物価上昇率は、政府のエネルギー料金支援策などにより一時的に抑制される局面があるものの、原油・LNG価格の上昇、円安、物流費や人件費の増加を背景に、基調的な物価上昇圧力が残ると予測される。こうしたなか、個人消費は年間で前年度比+0.7%とプラスを維持するとみられるが、食料品や光熱費など生活必需品の負担が再び強まれば、家計の節約志向が高まり、消費回復の勢いが弱まる可能性がある。

とりわけ、エネルギー価格の動向は2026年度後半の重要なリスク要因となる。帝国データバンクの調査では、エネルギー価格の上昇が経営に「マイナス影響」を与えている企業は89.4%に達した【2】。具体的な影響として、「原材料・資材コストの上昇」が76.5%、「物流コストの上昇」が58.5%、「光熱費の上昇」が55.0%となり、十分な価格転嫁ができず「利益の減少」に直面している企業も47.1%にのぼった。特に「農・林・水産」「製造」「運輸・倉庫」では影響が大きく、エネルギー高が川上から川下へ波及することで、物価上昇と企業収益の悪化が同時に進むことが懸念される。

【2】帝国データバンク「エネルギー価格上昇による企業への影響調査」(2026年7月27日発表)

企業部門では、設備投資は省力化、AI、デジタル、半導体、脱炭素関連を中心に増加が続くと見込まれる。人手不足の長期化により、設備投資は単なる能力増強ではなく、事業継続に必要な生産性向上策としての性格を強めている。特に大企業では、好調な企業収益や積極的な人材投資を背景に、研究開発やソフトウエア投資が成長をけん引しよう。年間では設備投資は同+0.6%の増加を見込む。

一方で、中小企業ではエネルギー、原材料、物流、人件費、借入金利の上昇が重なり、設備投資余力が低下する懸念がある。エネルギー価格上昇による利益の減少や賃上げ余力の低下が続けば、必要な更新投資や省力化投資が先送りされる可能性もある。また、建設業では資材高、人手不足、猛暑による作業効率の低下などが工期や投資額を押し上げやすい。設備投資は全体として増加が見込まれるものの、企業規模や業種による二極化が一段と鮮明になろう。

政策面では、AI・デジタル、経済安全保障、エネルギー安定供給、脱炭素などの戦略分野に対する官民投資が、中期的な成長力を押し上げると期待される。企業には、投資促進税制や研究開発支援、省エネルギー関連補助金などを活用しつつ、エネルギー使用量の削減、調達先の分散、価格転嫁のための原価管理を進めることが求められる。特にエネルギー価格の変動が大きい状況では、省エネ投資は脱炭素対応だけでなく、収益力と事業継続性を高める施策として重要性を増している。

総じて、2026年度の日本経済は、賃上げによる所得環境の改善、省力化・AI関連の設備投資、政策的な成長投資を背景に、緩やかなプラス成長を維持するとみられる。ただし、賃金上昇の広がりには企業間格差があり、エネルギー高、円安、金利上昇、海外経済の不確実性も残る。今後の景気は、内需を中心に持ち直すものの、コスト高によって力強さを欠く緩やかな改善にとどまると予測される。


■景気トピックス

暑さを「需要」に変え、「経営リスク」を抑えるための備え

猛暑が企業活動を大きく動かす季節になった。街では冷たい飲料や冷菓が売れ、家庭ではエアコンの稼働時間が延びる。職場でも冷却用品や空調設備への需要が高まる。暑さは人の行動を変え、その先にある商品やサービスの動きまで変えていく。

帝国データバンクの調査では、2024年の猛暑で売り上げが伸びた商品・サービスがある企業は11.4%となり、「小売」では30.5%に達した【3】。猛暑は、飲料や家電、空調工事、暑熱対策用品などに新たな需要を生み出す。企業にとって、暑さは確かにビジネスチャンスである。

【3】帝国データバンク「猛暑に関する企業の動向アンケート」(2024年8月15日発表)

もっとも、危険な暑さが続けば、消費者は外出を控え、店舗の客足が鈍る。建設や物流などの屋外作業では、休憩時間を増やしたり、作業時間を変更したりする必要がある。生産性が低下し、工期や納期に影響が及ぶこともあろう。

冷房の使用増加も企業の負担となる。エアコンや空調工事の需要が景気を下支えする一方、使用する企業にとっては電気代や燃料費の上昇につながる。2026年6月のTDB景気動向調査でも、エアコンなどの季節需要がプラス材料となるなか、円安やエネルギー価格の上昇が企業の採算を圧迫している。

猛暑は売り上げを押し上げる半面、電力費、人件費、物流費を通じて利益をじわじわと削る。経営者が確認すべきなのは「何が売れたか」だけではない。「暑さによって、どのコストが、いくら増えたか」まで見る必要がある。

企業経営でさらに重要なのが、従業員の安全確保である。熱中症対策は、もはや気配りや福利厚生だけの問題ではない。2025年6月1日から、WBGT、いわゆる暑さ指数が28度以上、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上もしくは1日4時間を超える作業が見込まれる場合、事業者には報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知が義務付けられた。

しかし、現場の備えは十分とは言い切れない。企業の95.5%が何らかの熱中症対策を実施・検討する一方、報告体制を構築している企業は15.2%、緊急連絡先を周知している企業は13.0%にとどまる【4】

【4】帝国データバンク「熱中症対策に関する企業の実態アンケート」(2025年5月21日発表)

飲料の支給やクールビズは重要である。しかし、体調不良者が出たときに、誰が異変に気づき、誰へ連絡し、どのような手順で作業を止めるのか。そこまで決まっていなければ、肝心な場面で現場が迷ってしまう。冷たい飲み物だけでは、緊急時の動線までは冷静にしてくれないのである。

中小企業にとって、猛暑対策は必ずしも大規模な設備投資から始める必要はない。まずはWBGTの確認、休憩・水分補給ルールの明文化、緊急連絡網の整備、空調・遮熱設備の点検から着手できる。

電気使用量を前年同月と比較し、設備別や時間帯別に把握することも有効だ。電気代を「夏だから仕方がない」で済ませず、空調の運用改善や省エネ設備への更新余地を探る必要がある。また、企業が政府に求める政策では「エネルギー安定供給の確保」が45.0%で最多となり、「電気・ガス料金補助の継続・拡充」も34.0%に上った【5】。国や自治体などの支援制度は、空調設備、省エネ機器、遮熱対策、労働環境改善に活用できる場合がある。ただし、補助金は会社の玄関をノックしてくれない。商工会議所や業界団体、自治体、金融機関などから情報を集め、自社に合う制度を探す姿勢が欠かせない。 "

【5】帝国データバンク「エネルギー価格上昇に対する企業の政策要望調査」(2026年7月6日発表)

猛暑対策は、人を守り、稼働を守り、利益を守る経営インフラである。経営者が見るべきものは温度計だけではない。現場の声、電気代、作業計画、そして緊急時の動線である。暑さに強い会社は、こうした地道な備えからつくられるのである。

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