レコフデータの調査によると、2025年度の日本のM&A市場は、件数・金額ともに過去最高を更新した。大型案件の増加、上場企業主導の戦略的M&A、非上場化や事業承継案件の拡大、投資ファンドや地域金融機関の関与強化など、複数の構造変化が同時進行している。不安定な国際情勢や経済安全保障への配慮が求められる中、M&Aは企業再編を支える基盤的な経営手段として新たな局面を迎えている。
■2025年度、日本のM&A市場は過去最高を更新
■上場企業が主役となったM&A市場
■投資ファンドの多様化と存在感の拡大
■事業承継M&Aの拡大と制度改革の進展
■2026年度のM&A市場の展望
レコフデータの発表によると、2025年度のM&A件数(公表ベース)は5,228件となり、前年度(4,715件)比で10.9%増加した。国内企業間の取引は、上場会社によるM&Aや事業承継M&Aの増加により、過去最高となった。また、海外企業による国内企業のM&Aも投資ファンドが買い手となるケースが増加し、こちらも過去最高となった。
取引金額は43兆334億円と、前年度(22兆8,894億円)から約88.0%増と大幅に増加した。背景には国内企業間だけではなく、日本企業による海外企業の買収、また海外企業による国内企業の買収で、大型案件が相次いだことがある。
注目すべき点は、この結果が必ずしも安定した経済環境の中で生まれたものではないという点である。2025年は、ロシア・ウクライナ問題の長期化に加え、米国の関税政策を巡る混乱、中東情勢の緊張といった地政学的リスクが続いた年であった。さらに2026年に入ってからも、1月の米国によるベネズエラへの軍事攻撃、2月の米国・イスラエルによるイラン攻撃、それにともなう原油価格の高騰、金融面ではプライベートクレジット市場を巡る警戒感の高まりなど、不透明な要因が重なっている。
こうした「良好とは言い難い環境」にもかかわらず、M&A市場が活況を呈した背景には、短期的な景気変動では説明できない、構造的な変化が存在している。
2025年度のM&A市場を特徴づけるポイントは、件数の伸長はもちろん、金額規模が大きく伸びた点である。市場全体を見ると、取引件数が爆発的に増えたというよりも、1件あたりの金額が大きくなり、結果として市場規模が拡大した構造である。
この背景には、日本を代表する大企業による大型案件の増加がある。トヨタグループによる豊田自動織機の買収(2025年6月公表→2026年3月終了)、ソフトバンクグループによるOpenAI(米国)への出資、三菱商事によるカナダのシェールガス関連企業エーソンの買収(2026年1月公表)など、象徴的な大型案件が相次いだ。
また、金利上昇局面に入ったことで、企業間の財務体質や資本構成の差が表面化し、結果としてM&Aの「スケール感」が変化した点も重要である。資金調達力やバランスシートに余力のある企業は、大型のM&Aを通じて成長戦略を加速させている。