本連載では、日本企業の主要進出先と想定される世界各国の政経情勢を取り上げる。
第16回は英国を紹介する。
2022年10月の発足から1年を迎えたスナク政権は、2024年中に行われる総選挙で国民の評価が下されることになる。
しかし、強いインフレ圧力が残り、景気の低空飛行が長引く経済状況などを背景に、世論調査での与党・保守党の支持率は野党・労働党に大幅なリードを許している。
スナク首相が総選挙で保守党を勝利に導くためには、政権発足直後に掲げた5つの政策目標に対して一つでも多くの具体的成果を出し、国民に「改革者」としての資質を示す必要がある。
【目次】
■スナク首相は政権発足直後に5つの政策目標を提示
■インフレ率は低下も、半減目標達成の手前で足踏み
■景気は2024年も低空飛行に
■残る3課題の早期解決も見込み薄
■スナク首相は「改革者」として支持を高められるか
■執筆者紹介
英国では、2代前のジョンソン政権の関係者によるコロナ自粛期間中の首相官邸でのパーティー報道(2021年末)をきっかけに、与党・保守党と野党・労働党の支持率が逆転した。さらに、2022年9月に就任したトラス前首相が僅か1か月半で退陣した中、その差は拡大し、現在も20%ポイント超の大幅リードを許す状態となっている。
2022年10月に就任したスナク現首相は、2024年中に下院総選挙が行われることを視野に、2023年年初に、5つの優先政策目標を掲げた。
以下ではまず、発足後1年を迎えたスナク政権による、これらの5つの目標実現に向けた取り組み状況を整理したい。