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値上げ疲れ鮮明 10月以降も家計負担重く

■一部商品では「値下げ」恩恵も、家計の負担重たい状況が続く

足元では、4600品目超の値上げが予定されている10月をピークに、11月以降は比較的値上げは落ち着いた情勢が続く。10月の値上げは第3のビールや日本酒など酒類が多い一方、使用頻度の高い調味料や加工食品は少なかった。

原材料価格の一服感に加え、コスト増分の価格転嫁が進んでいることも背景に値上げの機運は鈍化傾向が鮮明化している。一部PB商品などは値下がりするものもあり、10月以降の家計負担に対する影響は4月に比べて抑制されるとみられる。

ただ、これまでの値上げされた食品類が今後店頭価格に反映されるケースもあり、家計の食費負担は今後も高止まりが続く。相次ぐ値上げラッシュに対して賃金上昇が追い付かない状況が続くなか、24年1月以降も円安水準の長期化で値上げが再加速する懸念もあり、やむなく値上げを受け入れながらも食費を「切り詰めざるを得ない」局面が続く。


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■家計の「値上げ疲れ」鮮明 食品値上げ、1世帯で「月3700円」食費節約の試算

3万品目を超える過去最大級の値上げラッシュとなったなか、足元では相次ぐ値上げに家計が追い付かない「値上げ疲れ」の兆候が鮮明となってきた。

帝国データバンクが9月29日までにまとめた、国内の主要な食品や飲料メーカー195社が4月以降に値上げした食品約2万2000品目の値上げデータと、総務省「家計調査」における二人以上世帯の消費支出データを基に、生鮮食品を除く食品値上げによる家計支出額の影響について試算した。

その結果、2023年度上半期における1世帯あたり家計への食費負担額は、節約など値上げへの対策をしない場合、前年の22年度月平均から1カ月当たり最大で1割増の4058円、年間で約4万8000円増加する試算だった。

他方、実際の支出データでは、7月までの平均で月373円・約1%の増加にとどまった。本来見込まれた増加額に比べ、約3700円分の食費支出が家計で「節約」により圧縮された可能性がある。

節約された家計負担額を食品分野別にみると、最も金額が大きいのは「加工食品」で、想定された増加額より月1293円の節約試算となった。加工食品では年間で値上げ1回あたり約14%の値上げが実施された中で、冷凍食品や水産練り製品、即席めん製品などで節約の傾向が目立った。

「菓子」は月782円、「酒類・飲料」は月697円それぞれ節約される試算となった。

酒類・飲料では、9月までにウィスキーやワインなど比較的嗜好性の高い品目に加え、コーヒーや緑茶製品など常飲される製品の値上げも多くみられたなか、ディスカウントストアなどでの購入など定価販売を避ける動きや、安価なプライベートブランド(PB)製品への移行に代表される「値上げ疲れ」「買い控え」の消費行動がみられることも、想定より支出が抑制された要因となった。

一方、食パンや菓子パンなどの「パン製品」では190円の節約にとどまったほか、「食用油」は80円、小麦粉などの「原材料」は26円、それぞれ当初試算より節約され、他の食品分野よりも圧縮幅が小さかった。

食用油などは前年度に比べると値上げが比較的穏やかだった要因もあるものの、調理に不可欠な食品類では総じて値上げの受け入れを迫られた可能性がある。


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